社会の毒 ―少年漫画症候群(ジャンプシンドローム)―

読んだらもう1回作品を見返したくなる、そういうレビューを私は書きたい

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火ノ丸相撲における「ヒロイン」の特殊性とその展望を考える

さて今回のテーマは、『火ノ丸相撲』における「ヒロイン」という存在の特殊性についてです


毎週の感想の中で時々触れてきましたが、ちょっと一回整理しておきたくなりました
書き上げてみた結果、言うほど整理できた気はしてないんですけど…


ではまず、どんな特殊性があるかという部分から見て行きましょう

作者川田先生は、2つの点において「ヒロイン」という存在について
特別な描き方をしていると思われるのですよ



 








1.希薄な存在感


相撲をテーマにしたこの作品では、連載開始当初から「ヒロイン」の存在感が
意図的に薄められていたフシがあるのです


顔を見せずに2コマくらいの登場で1話目以降、全然顔は明かされることなく
「相撲部」がスタートできた時にやっと顔見せされたレイナ

しかしそれも最初は悪女のようなキャラであり、火ノ丸も相撲も認めようとすることなく
「相撲なんかかっこ悪い」という考え方をする立場にありました

今の新人戦が始まっても、客席で1ページくらい取り巻きと喋ったりするだけで
描写の中心には全くいない状態で


本作品において、女の子キャラは圧倒的に描写が少ない構成になっているんですね
それはおそらく、川田先生が意図してやっているのだろうと考えています

理由は、展開と印象にメリハリを付けるため

男たちが裸でぶつかり合う競技である相撲は、その迫力や荒々しさ、雄々しさが
何よりの特徴であり、魅力となるものです

そんな中に、身体つきや雰囲気が柔らかいようなヒロインがいたりすれば
誌面から受ける印象がまるで変わってしまうのではないかという懸念があるのではないかと


極端に言えば巨乳ヒロインだとか、おっとり型のヒロインとかがいたとしたら
彼女のいる応援席が描かれるだけで、せっかくの荒々しい勝負の印象が薄くなってしまうでしょう

あるいは

たとえば狩谷と火ノ丸との激突のような「負けられない理由」を互いに背負った勝負の時に
たとえば久世と國崎のような「負けたくない気概」を互いに抱えた勝負の時に

女子マネージャーが女子の口調で応援してたら、おそらくそれはノイズになってしまうんじゃないかと

川田先生が描こうとしている相撲が、男たちの暑苦しさとむさ苦しさにあふれるような荒くごつごつした世界だとすれば、
そこに女の子が存在することはすなわち正反対の要素が入り込んでくることであり、邪魔とさえ言えかねないものなのです

しかし、だからといって少年漫画にヒロインが登場してこないなんてのはありえないことです

「少年漫画」における「ヒロイン」というものの必要性とは自明すぎておそらく誰も語ったことがないだろうと思いますが、
存在感を調節することでうまく展開させている川田先生のバランス感覚は、なかなかに優れていると言うことができるでしょう


川田先生のそうした意図を特に感じたのはこのシーンですよね




女の顔として描かれたレイナ



本作品で初めて「ヒロイン」が登場したと位置づけることができると考えられるこのカット

線の細さ、トーンの繊細さによってしっかりと「女の子」らしく描かれているレイナの姿
悪女のようなキャラとしてこの数回前から登場していた彼女の描き方として
ここまで柔らかく、静かな雰囲気を持ったものは初めてでした

さらに絶妙なのが、この前のページでは別の描き方がされていることなんですよ



太めの線で描かれたレイナ

レイナが実際にはどんな性格であるのかを示すギャグ調のコマ
悪女のようだった彼女が、実はお兄ちゃん大好きな女の子だったということが
太めの線によるコミカルな描き方によって強調されている姿です

上の画像と見比べて、描き方が明らかに違うことがお分かりになるでしょうか

これがあることで、あの繊細なカットがなお映えているんですね
コミカルな描き方で「子供っぽさ」が示された後に、繊細な姿を見せることによって
歳相応の女らしさを描くというこの構成

見事なバランスと演出です


読み切りの時、レイナが火ノ丸にちょっと惚れたような空気を出していたことを考えると
別に川田先生がヒロインキャラを苦手にしているとか、ちょっとしたラブコメ要素を取り入れることに
忌避感を持っているとかではないはずなんですよね

だとすれば、この圧倒的な「ヒロインキャラの描写の少なさ」というのはわざとなんだろうと思うわけです
川田先生からの発案なのか担当からなのかはわかりませんが、うまいこと考えたものですよ



2.「男の世界」をよく知らない


言い換えると、
本作品のヒロインたるレイナは男のプライドや意地といったものをよく理解していないキャラとして描かれている、
ということです
これが特別な描き方の2つ目


先ほどの画像の時でこそ、「見せてもらおうじゃないの」とか言ってましたが
基本的に彼女は、火ノ丸や相撲に対して「そこまでして全力出してどうすんの」といった考え方を持っています

相撲という競技自体に対する偏見も多分にあるでしょう
男同士が汗にまみれて裸でぶつかり合うんですから、そりゃあ気持ち悪いとかダサいとか
偏見を持ってておかしくはないですね

そうした偏見に加えて、勝てそうにない相手に全力出して案の定負けたり
初心者と舐められたり無様に倒されたりすることにも嫌悪感を持っています

つまり「勝てそうな奴としか勝負しない」「勝てそうな内容でしか勝負しない」という発想なんですね
それは、かつての佑真が普通のことだと考えていたものです

火ノ丸に何回もぶん投げられたことで、佑真は本気になり、火ノ丸への対抗意識から
相撲を始めることにしました

体格というハンデを持ちながら一切諦めることなく、ひたすら鍛えに鍛えることにこだわる火ノ丸を見て
狭い世界でトップだと言い張っていた自分が恥ずかしくなったからでした

男の意地に火を付けられた佑真はそこで大きく意識を変化させましたが
その変化を理解できないのがレイナなんですね

おそらく典型的な女の子である彼女には、というか悪女的キャラとして合理的な考え方を是としているだろう彼女には
そうした「男の意地に基づく発想」が全然理解できないのです

そんな体格差で、そんな実力差で、勝てるわけがないのにどうして挑むのかと
たかが部活の大会だというのにどうしてそんな本気な顔をしているのかと


少年たちには何となくでもわかるだろうと思われることを、レイナは全然理解できないキャラとして描かれています


3.今後の展開の予想と願望


で、今週の引きですよ

全身全霊、それこそ今まで積み重ねてきた稽古と努力の全てを賭けて挑んだ勝負に負けた火ノ丸
悔しさに暮れる彼の前に前触れもなく現れたレイナ

きっと思ったことをそのまんま口にして、火ノ丸を追い詰めるような言い方をするんじゃないかと思うんですよね

やっぱり負けたじゃないかと
負けたのがそんなに辛いなら辞めてしまえばいいじゃないかと


それに火ノ丸がどう応えるかは次回を楽しみにするだけですが、レイナのこのキャラ性については
できれば変えてほしくないなとも思うんですよね


火ノ丸の返事に一定の理解を感じたとしても、やっぱり根本的な部分では疑問を持ってて欲しい

というのも、そのほうがある意味で理想的なヒロインになる可能性があるかなーと思うんですよ


どういうことかといえば、男の意地やプライドにこだわる価値観自体は理解できなくても
それを大事にする兄貴や火ノ丸のことは信頼するようになってほしいな、と

つまり、誇りやこだわりのことはよくわからないけれど、それらを大事にする火ノ丸たちのことは認めて
ただ体と心の心配だけをして、元気そうにしているならそれでいい、という考え方をしてほしいなって

何か男側から非常に都合がいいような女性像を求めているかのようですが
こうすると、「ヒロイン」が登場する穏やかな部分と、相撲をとる激しいシーンとを分けて描けるようになるんです

それはヒロインの存在感について川田先生が絶妙な範囲に抑えようとしている構成の
進化形というか完成形というか、そんな感じになるものです

イメージとしては、旦那の仕事に一切口を出すことなく、心身の心配や補佐をしつつじっと待つ専業主婦に近いでしょうか


ヒロインの存在感に気を遣うのは今だけではなく話が続く限りずっと、なら
この展開のほうがわかりやすくなるかなーと思うんですよ

ヒロインが前に出てくるようなことは、この作品に限ってはしないほうがいいとすれば
それでもヒロインに確かな役割や出番を用意するには「相撲以外の時」にいかに関わらせるか、になります

そうすると、男の価値観はよくわからないというようなヒロインの方が女性性がより強調されることになって、
男臭さにあふれる相撲シーンに比べて、より鮮やかな場面になるというか

部のマネージャーというのもまあありといえばありですが…
それだと「男の価値観」を理解してる印象が強くなりそうな気もしますね

ただ、ヒロインに「見送られる」という構図もあったりすると
よけい「男の世界に赴く」感が出るので、マネージャーじゃないほうがその演出できるかなーとか

で、マネージャーじゃないヒロインが主人公を見送るとしたら、恋人とかじゃないと不自然なので
その展開も希望


ラブコメの部分もまた、相撲の荒っぽい印象と逆にドキドキした感じを出せたら
それだけでギャップ効果で相撲シーンが引き締まることにもなりますよね


…もちろん、本作品に登場してくる女の子がレイナ1人だけというのもおかしな話ですので
主人公たちへの関わらせ方はいろいろあると思うんですけども

ていうかここまで書いて、「ヒロインがレイナ1人だけ」って前提で書いてたことに気が付いたんですけども



ちょっとラストにかけてなかなか考えがまとまらないままになりましたが、伝わりますでしょうか
要するに、相撲以外の部分でもこのマンガには大いに期待しているということです

COMMENT▼

No Subject

思っていたことを纏めて下さってありがとうございます。綺麗に纏まってると思いますよ~

記事にもある通りレイナがマネージャーに納まっちゃうと荒々しさにノイズが入っちゃうんです。
高校生としての潮は愛嬌があるし、ただの勘ですが女の子への興味も人並みにあると思います。
そう思う根拠は1巻の番外編で「何か色々と汚された気分」になったからです。
女性を意識していなければそんな気分にはならない。ただ相撲の順位が遙か上にあるだけ。

恋人ではない、佑真の妹や生徒会副会長として「学校背負ってるんだから勝って来なさいよ」
ぐらいで、互いに惹かれつつも付き合うには至らない関係が私的にはベスト。

ところで業の深い腐記者「名塚女史」はヒロインにカウントしたらいけないですかね?w

No Subject

>黙って見送る
そんな専業主婦みたいな性格になるとは思えませんw
いやまぁ、確かに元ヤンで家庭では実権握ってても外では夫を自由にさせる人も居るでしょうから、そんな感じかなぁとは思いますがw
果たして彼女がそう言う風になるかどうか・・・まぁ今後の展開次第ですね。


>ラグエルさん
あれ、副会長でしたっけ?(^^;
会長かと思ってたんですがw
例の記者は









ノーカンでオナシャス

Re: No Subject

皆様コメントありがとうございます。

自分じゃとっ散らかったままの内容になったかなと思ってましたが、そうでもなかったようでよかったです。

ヒロインの持つノイズ性というのは、本作品にかぎらず、大なり小なり他の作品にも存在しているものですよね。ただそんな気にならない程度に収まっているだけで、「何となく好きになれないな」という原因の1つにもなっていたりするかもしれません。

火ノ丸も普通に女の子に興味あるだろうというのは、確かにそうだと思います。「女なんかどうでもいいんだよ」なんていう捻くれキャラじゃありませんからね。しかし、相撲自体がヒロインによるノイズを気にしているさなかに、主人公が女の子への興味を見せる場面を描いちゃうと、相撲の荒々しさと雄々しさを象徴している主人公の中に余計なものが出てしまいそうというのは懸念としてありそうです。

そう考えると、付き合うとか付き合わないとか言ったラブコメ的な部分は積極的には描かないほうが確かに良さそうではありますね。

レイナが火ノ丸に惹かれていったとして、ヤンキー入ってる彼女がそんな大人しいことになるかといえばわかりませんが。


名塚女史は…

ノーカウントで(;^ω^)

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