社会の毒 ―少年漫画症候群(ジャンプシンドローム)―

読んだらもう1回作品を見返したくなる、そういうレビューを私は書きたい

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浅さは伸びしろの裏返しか…? 『RE QUEST』渡部開

第83回トレジャー新人漫画賞佳作

RE QUEST  渡部開


佳作5作品のうち、web掲載となった4作の最後です

ここから読めます


なんで最後になったかといえば、一番書きにくかったからなんですよ

なんで書きにくかったかといえば、一番浅かったからなんですよ

何が浅かったって、話と世界観ですよ


シンプルな勇者と魔王という対立像を設定しての、「魔王が倒された後の世界」に
勇者がどう生きているかを描いていた作品は、いつだったか他にも見たことがある気がするんですが
おぼろげなその作品の記憶とほとんど印象が同じなんですよ

勇者のはずの主人公は定職につけずにほとんどニート状態で、
それでいてしっかり働こうとしている昔の仲間から説教されている…みたいな

うろ覚えなんでアレなんですけど、ほとんど同じ構図と設定の作品を読んだ記憶があります
そして、その作品の印象とほとんど同程度の読後感のような気がします

何がってつまり浅いんです


普通の物語なら勇者たちが魔王を倒すまでの過程を劇的に描いていくところを
あえて「最終バトルのその後」に焦点を当てるというのはいいんです

しかし、平和になったはずの世界で勇者は負け組状態、ってのは何だかなあって思っちゃうんですよ

別に世界を救った業績を誇らしげに語って権力やら栄誉やらをかさに来て
横暴な感じになってろ、というわけではありませんが
世界を救った勇者がその後半ニートでは、「勇者は何のために世界を救いたかったのか」が
全く何もないことになっちゃうんですよね

魔王を倒して世界を救うことは勇者にとってゴール地点であり、
その後に何かをやりたかったようなスタートラインではなかった

ヒーローとは悪役がいるからヒーローであるという哲学的な話ではなく、動機や目的の問題なんです

何のために世界を救いたかったのか、その動機
もし、平和な世の中とか泣いている人がいるからといった感情的で根源的な理由であるとすれば
魔王を倒すことが手段ではなく目的であることは理解できます

しかし、それなら魔王を倒すことで全部が全部一件落着という考えに至ってしまうことがどうも不自然なんですよね
魔王いなくても悪い奴は普通にいるだろ、と
それこそ作中に出てきた一味のようにですね

その程度のことに気づけないか…?という不自然さが出てしまうんです

しかもその程度のことに作中の結末として気がついているから爽やかなはずのオチが逆に愚かしいというか

その上、敵一味との戦闘が始まったのが楽しくてワクワクしちゃってる主人公の様子が
さらにその感覚を増幅させるんです

そこにあるのは、感情的で根源的な理由で魔王を倒すことに命を懸けられるような
ストイックで理想的なヒーロー像ではなく、救った人から讃えられたり感謝されたりといった
見返りがあるからこそ身体を張っていけるという勇者像としてはどこか引っかかるような姿

魔王を倒すために冒険していた頃を「楽しくて充実していた」と懐かしむだけならまだ大丈夫でした
しかし戦闘が始まったら顔がキラキラし始めたり、敵の攻撃を食らって「これだよこの感覚だよ」なんて
盛り上がってるのは間違いなく理想的なヒーロー像ではなかったのです
悪く言えばヒーローではなく単なる戦闘好き

捻くれ系というか、そんなヒーロー像が悪いとは言いませんが
じゃあそれなら魔王を倒したらそれで全部悪は一掃された、なんて考えになるか?と


描きたかったのは、ラストページの「2周目だ!」のコマなんでしょうね

タイトルのクエストと言い、2周目って表現と言い、作者のゲーム脳を疑わせますね
ドラクエとかやってる時に思いついた話か?と



評価できるところといえば、基礎的な構成力でしょうか


話の始まりからオチに向かって、意外と普通に起承転結が構成されているんですよ

まだまだ荒削りとは言え、話の興し方から結び方の基本ができていることは
最低の合格ラインと言えるのではないかと

さらに、時折挟まれるギャグのようなシーンや、迫力を出そうとする見開きは
そこに至る流れや演出がこれも基本を押さえたものとなっていて、編集部としては「育ててみたくなる」感覚に
なったんじゃないでしょうか

マンガ家としての基礎的な器はそれなりにできているので、じゃあその器にどんな装飾を施そうかとか
どんな風に強化してみようかとか、伸びしろや成長を期待させるものがあったのではないかと思うのです

イコールそれは、誌面に掲載できる作品を作り上げるまでに結構な苦行があることを予想させるものですが
乗り越えた時にはなかなか面白い作家になっているのではないかと思われます

ひょっとしたら次に名前を目にするまでに時間があくかもしれませんが
渡部開さん、頑張ってください


 




COMMENT▼

No Subject

rexelさんの仰る通り、基礎的な力量は確かにあります。でも私も好きになれません。
好きな人は好きになれる作品だと思いますけど(銀魂もメインキャラが基本ダメ人間だし)。

そしてこれも仰る通り、どっかで見聞きしたものの継ぎ接ぎを強く感じるんです。
継ぎ接ぎしてもそこに個性を交えれば何かしら独自の空気を読み取れるもの何ですが、
それが残念ながら感じられません。
(ちなみに思い付いた似たものはボカロ曲の「BOSS DEATH」。強すぎる力は異端という点)

才能はしっかり感じますのでこれからに期待しています。

Re: No Subject

ちょっときつい言い方をすると、「一応読めるのは読める」というレベルの作品なんですよね。

おそらく投稿されてくる中には、わけがわからん…って拙いものもあるんでしょうから、
その中で一応最後まで読めた作品はそれだけでも評価できるものでしょう。

ただ、それだけというか。

本当に基本的な力量があることが窺えたので、じゃあ育ててみようということでの佳作かなーと
穿ってみることもできるんですよね。

まあとりあえず次回作ですね。

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