社会の毒 ―少年漫画症候群(ジャンプシンドローム)―

読んだらもう1回作品を見返したくなる、そういうレビューを私は書きたい

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表現力と演出力を秘めた原石か…?『ほのか』高見沢乾

第83回トレジャー新人漫画賞佳作

ほのか 高見沢乾


昨日に引き続いて5作品の1つですね

ここから読めます



この作品の一番光っているところは、逆説的な救済を描き切った点に尽きるでしょうか

入院していた主人公のもとに現れた幽霊の少女
彼女の頼みを聞いていたうちに、少年も死んでしまうわけですが
そのことがバッドエンドではなく、少女にとって救いのある結末となっていたんですね

主人公の死が少女にとって救いとなる

通常ならどんな描き方をしても読者に釈然としない感覚しか生まない結末を
しっかり「救い」として描き切っていた作劇は見事なものでした

これがたまたまそうなったようなものならばこんな評価はしないんですが
おそらくは作者が計算の上で描いた結果狙い通りになっていることが感じ取れるために
評価したいんですよね

つまり、この人は「狙った効果を狙って演出できる」力を持っているということ
確かな演出力のある作家は、編集部としては大事にしたい逸材であることでしょう


それともう1つ特筆しておきたいのは、表情の描き方をわかっているんじゃないかということです

主人公のもとに現れる幽霊の少女「ほのか」
幽霊であることの描写のため、彼女は最初から瞳が真っ黒に塗られた顔で登場してきます

わかりやすく例えたら、HUNTER×HUNTERのナニカのような顔ですよ
あんな顔で最後まで登場するんですが、ちゃんと表情が描けているんです

瞳は真っ黒ですから、何の描き込みも工夫もできません
口の形と大きさだけでそのコマ、その時における表情を表現しているんですが
どんな顔をしているのか割とわかる


ぶっちゃけちょっとかわいい…とか思ってしまったコマもありましたし

黒塗りの瞳も普通に顔の一部として描きながら、口元と、あとセリフと流れで表情を見せるのって
意外と難しいような気がするんですけどどうなんでしょう?



で、もちろん欠点もあるんですけども

やっぱり一番は中身が浅いことでしょうか


深く掘り下げられていない、というよりは
不要な部分があるんじゃないのか、という感じです

最も強く思ったのは冒頭、主人公の少年が誰も見舞いに来ないという事実にちょっと焦ってるくだり

これ必要だったか…?

友達の話は、その後ほのかと出くわした少年が、彼女との会話を展開する中で登場し
「友達なんてたくさんいるよ」という少年の些細な見栄に対して、ほのかが異常なリアクションを示すことでの
彼女の深層を垣間見せるという場面の前フリだったとも言えるんですが

それでもスペースを割きすぎている感が拭えません

特に、このシーンは話が始まった冒頭部分ですから
その後「幽霊と出くわす」シーンに繋ぐ意味において最善の場面だったかといえば
もっとやりようなかったか?というのが正直なところ

その後のシーンで幽霊の孤独に触れるセリフがありますので、それと絡ませるために
「ホントの友達がいない」という事実を示したかったのかもしれませんが
それにしてもあっさりすぎるんですよね


さらに、「手紙を探して欲しい」という少女の頼みを聞く気になるまでの
主人公の1ページの葛藤も不自然でしたね

葛藤というほど悩んでもいないんですが、1ページもかけた割には特に何でもない形で腹を決めています
誰かのために何かするなんてなかったな、と過去を振り返ってみているのも不自然で


それから、見つかった少女の手紙を水たまりに落としてしまうというのもね…
要らないシーンというよりは、これは完全に作者の都合による展開ですよね

主人公の少年に手紙の中身を見せるための、「場面のための場面」

そうした部分もどうしても必要なこともあるのはわかりますが、あまり露骨に感じられてしまえば
大きなマイナス印象になってしまうんですよね


上記2つのシーンについても、「場面のための場面」という感じが多少なりあると思います
心理的・現実的に不自然というか都合がいいというか


そうした部分における作劇をもうちょっと洗練することができれば、もとは演出力のある作家さんならば
大いに魅せることができるんじゃないかと思います


高見沢乾さん
頑張ってください


 




COMMENT▼

No Subject

ジャンプ編集部は高見沢先生を大事にしないと絶対にダメです!

何と云う逸材でしょう。荒削りながらも面白くて、本誌掲載でも良かったと思います。
こんなウロな目と口で描かれた女の子がなんで可愛く見えてしまうのか…
不気味さと可愛さが、激しさとあどけなさが、見事なまでにバランス良く成り立っている。
少年の方はほのかちゃんに比べたらキャラ作りが甘いですが、それはほのかちゃんが高いからで
新人としてみれば作り込めている方です。
そして構成力。これだけの稀有なストーリーを飽きさせず疲れさせずに読ませる高水準。
描写力においても画力は拙くとも表現力ならばプロに匹敵するレベルです。
ほのかちゃんをこれだけ描ける漫画家がどれほどいるでしょうか?


重ねて言います。高見沢先生は潰してはいけない逸材です!!

無題

なかなか、すごい新人を見た気がしますよ。
もっと、年齢が若ければ...
って気持ちもありますが

Re: No Subject

おお、結構な高評価をされてますなあラグエルさん。
わからんではないですが。

逆説的な救いを描き切った構成とともに、真っ暗なほのかをそれでも可愛く描けるとは
相当の描写力ですよね。

じゃあちゃんと描かれたヒロインはどれくらい可愛いのかと思ってしまいます。
ブラック寄りでもないが、ホワイトっぽくもない。
絶妙なバランスの雰囲気の話を描けるとなれば、それだけで個性となるかもしれません。

期待ですね。

Re: 無題

どうもです、名無しさん。

こちらも結構な高評価をされてらっしゃいますな。

年齢はまあ…、仕方ないですよね。
何かを始めるのに遅すぎるなんてことはない、という少年漫画理論でどうかひとつ。

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