社会の毒 ―少年漫画症候群(ジャンプシンドローム)―

読んだらもう1回作品を見返したくなる、そういうレビューを私は書きたい

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発想には可能性があるが、深さが今ひとつか… 『ミッドナイト・ナイトメアー』上原勇貴

第83回トレジャー新人漫画賞佳作

ミッドナイト・ナイトメアー 上村勇貴


大豊作と言われる5作品の1つですね

ここから読めます


悪夢を見せる悪魔と少年の出会いを描いたこの作品

『ルーザーゲーム』とは対照的に、とっても少年漫画ですね


1ページ目、恐怖に叫ぶ女性と何か悪役らしい笑みを浮かべた奴とが出てきた時は
食傷気味の展開か…とか思って一瞬ゲンナリしてしまったんですが、それが夢だったというのは
いいスカシでしたね


さらに、悪魔メアーが興味を抱いた少年との夢の中での一騎打ち

悪夢を見せられる=夢を自在に操れるという悪魔にどう少年が対抗するのかと思ったら
明晰夢とは思いもしませんでしたよ

意外性もあっていい答えです
ルシッド・ドリームという厨二病あふれる横文字も実に素敵


明晰夢は俺も今でも体験することがあって、割と身近な感覚で受け止められましたが
それでもこの少年ほど一気にどうこうできるなんてことはありませんね

せいぜい「この展開は前にも夢に見たことがある」とか気づいて先回りしてみたり
舞空術とかやってみたり、そんな程度


マンガとして扱うならこのくらい極端な方が描きやすいかもしれませんね

おかげで悪夢を見せる悪魔と明晰夢という夢を操作できる2大能力者が闘うという事態となるわけですが
ここで上手いのが夢の中という舞台設定なんですね

つまり、ファンタジー世界よりも何でもありな世界観なわけですよ

そのフィールドをどんな環境にするか
自分はどんな姿でどんな装備でどんな能力を持っているか
どんな敵や怪物を繰り出すか


そのほとんどすべてが両者の思い通りになるわけで、バトルとしてはいくらでもやりようのある展開なんですね
その代わり作者の魅せ方によって面白さは0にも100にもなるんですけども

この作品の場合は…

60くらい?

半分くらいはいってるか?
まあ悪くないくらいにはなってると思います


ただ、ですね

夢というこの舞台設定を活かしきれていたかといえば、うーんとなるのが正直なところです

一番の要因は、「目が覚める」という部分が全く描かれなかったことですね


夢の中を主要な舞台とするならば、その対照として当然起きている状態があるはずなのです
しかしこの作品では終始夢の中ばかりで話が展開していき、まるでそれ以外には世界がないかのような空気さえありました

夢を見ている状態というのは、当たり前ですが起きている状態も存在していることを前提とするものです
起きてる状態がなければ、本作が描く夢の中の世界は、ただ何でも思い通りに動く都合がいいだけの世界観になってしまうのです


トラウマとやらを象徴する怪物が出てきた時も、少年はもちろん悪魔であるメアーまでも驚愕していましたが
「起きたらダメなの?」という気持ちにもなってしまって、今ひとつ場面に同調できないんですね

だって明晰夢なら夢の中の舞台を変えるだけじゃなくて起きるのも自由じゃないの?
俺は明晰夢見てながら「この夢は気に入らんな」と思った時は、あえて目を覚ますようにしてるんですけど
だって舞台全部作り変えるほどの上級者じゃないので(;^ω^)

夢の中でじっと目を閉じたら、現実で目が覚めるというのが俺のパターンなんですけど

はい、どうでもいいですね



もう1つ、肝心なところがちょっと雑かなーと思ったんですね

ハイレベルなルシッドドリーマーである少年に対して、メアーのモノローグを借りて
何か特別な理由があるっぽいと伏線が貼られましたが、それに関わるトラウマの理由は
もともと友だちがいなかったところに「鼻から牛乳」をやらかしてしまったために
さらに孤立した…という

その孤独が上級の明晰夢使いとしての元になっている…という


明晰夢を使える理由として孤独な環境を持ってくるのはいいんですが
直接的なきっかけが「鼻から牛乳」ってのがね

とってつけたような事件よりはリアルといえばリアルなんですが、リアル故にしょぼいんですよ
鼻から牛乳ってのは実体験だったりするんでしょうかね…

あるいは、鼻から牛乳も、恐竜に玉乗り仕込むなんてCHA-LA HEAD-CHA-LAも、
何か一昔前の雰囲気を感じてしまうんですけど

でも作者19歳か…

ドラゴンボール改のオープニングはCHA-LA HEAD-CHA-LAなのか?


それと、トラウマの正体が単なる怪物っていう表現も安直なんですよね
しかも理性も何もない破壊的な怪物かと思いきや、トラウマが出来た経緯を丁寧に説明してくれたりとか
エロ本に釣られたりとか、そんなに怖くもないし凶暴さも感じないという残念さ

「トラウマの扉」が開けられた見開きの登場シーンは相当に迫力があって、割とビビった感じもあっただけに
その後の怪物の残念化が残念でした





気になったのはその辺りでしょうか

「起きてる世界の描写がない」ことはなかなかに決定的なことなのではないかと思いますが
夢という世界観の持つ広がりの可能性を考えると、どうにか解決して読切に練り直してみる価値はあるんじゃないでしょうか


上原勇貴さん
頑張ってください


 




COMMENT▼

No Subject

ルシッド・ドリーム(Lucid Dream)は明晰夢の英訳ですよ~(^-^)

設定やで出足は良いんですが後半で崩れてしまった印象を持ちました。
一言で言うならオチが弱い。

ストーリー漫画を目指して描いたのでしょうが、ギャグ漫画的な演出が多すぎるので、
バランスが悪くなっているんです。
トラウマとは心的外傷。そのトラウマがああも明るいと傷自体が大した事無いのと同義。
ライトな漫画を描きたい印象もありましたが、それならばトラウマは出さずに
最後の浜辺で少年がずっと孤独で…と自ら説明するだけで良かった。

しかし、才能は確かに感じました。もっと力を付けて描いた作品を読んでみたいです。
頑張って下さい。

Re: No Subject

単純な英訳だったんですか。なのにこんな厨ニあふれる響きなのか…!

ギャグ的な処理の仕方が残念とは、講評でも言われてましたね。
そのやり方が全部悪いわけではないんですが、この作品の場合
作者が手を抜いたかのような印象になっているからダメなんですよね。

とは言え、投稿作ですからまだ許される範疇でしょう。
担当編集者のもとでみっちり鍛えられれば、期待が持てるんじゃないかと思いますね。

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