社会の毒 ―少年漫画症候群(ジャンプシンドローム)―

読んだらもう1回作品を見返したくなる、そういうレビューを私は書きたい

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暗殺教室 暗殺に成功した時、彼らが抱くのは達成感か喪失感か

達成感か喪失感か




テスト結果の報酬とリゾート合宿の舞台を使って、初めて本格的な暗殺計画を実行したE組の面々

誰もがしっかりとそれぞれの役割を全うしながらも、最も要となる狙撃手2人が本番の緊張感を前に
手元が狂ってしまったことで失敗に終わってしまいました

ここでどうしても気になることが1つあります




もしも暗殺が成功していたら、彼らは達成感に酔いしれたのか?









触手破壊の権利という標的弱体化の好機と
海に囲まれた島という標的の弱点にあふれた舞台と
そこで実行する全員参加の大掛かりな計画のために

期末試験であれだけの奮闘を見せた彼ら



その結果見事に勝ち取った大きなチャンスを最大限に使って
担任教師の暗殺計画を実行したE組


その計画が見事実って殺せんせーの暗殺が成功した時、彼らはそれを喜ぶのでしょうか
あるいは祝うのでしょうか


このことはおそらく私だけではなく多くの人が何となくでも感じていることだと思います

なぜならそれこそがこの作品の魅力を生む源泉であり、
さらには作者松井先生が意図して作っている印象だからです



ただ、それを言葉にするのには何だか躊躇ってしまう部分がなぜかありました

が、最近のような展開を見せられては考えざるをえない気持ちにさせられます



地球を滅ぼすつもりの超生物でありながら、なぜか中学校の教師をやるという殺せんせー
そこでその受け持ちのクラスとして超生物の殺害を求められた生徒たち


出会い方こそそんな分けの分からない形でしたが、
学校生活においては実に理想的な関係とすら言えそうなほどに両者は近づきました


悩む生徒を導く教師

実際殺せんせーの言動によってモヤモヤや迷いの晴れた生徒が何人もいました

そんな教師を暗殺しようとする生徒とそれを望む教師


暗殺と教育という交わらないようなはずの二者が奇妙に交差して
中学生を成長させていく様子がなんとも言えない不思議な魅力を醸し出しているのがこのマンガの特徴です



そうして殺す標的の先生と触れ合ってきた生徒たちは、間違いなく
ある一定以上の親近感や尊敬の念を教師に抱いていると考えられます

同時に暗殺の訓練も受ける立場として、標的を仕留めるという目的も同等以上に抱いているでしょう



暗殺と教育が交差することはあっても
暗殺と憧憬が交差することは果たしてあるのか



このことを、松井先生は意図して作品の核として作り上げてきました
それは、距離が近づけば近づくほど、助けられれば助けられるほど、話せば話すほどに
全くわからなくなっていくだろう生徒たちの本音として、読者にある疑問を感じさせます


彼らは本当に殺せんせーを殺したいと思っているのか?





別の言葉で言い換えましょう


もしかしたら彼らは、どんなことをやってもきっと殺せんせーは死なないと思っているのではないか?



こんな疑問が頭に浮かんでくるのです

それは諦めなどではなく、憧れの対象を絶対化することによる自分勝手な理想像の解釈です

憧れのあの人は私生活も立派なのだろうと勝手に思い込んだり
憧れのあの人は成績も凄いんだろうと思い込んで相手を理解したつもりになる

中学生の恋愛や憧憬にはしばしばあることですが、これが殺せんせーに対しても起こっているとしたら


だからどんな計画でも本気のように実行できる
ただしその本気の裏側には、殺せんせーが死ぬわけはないという確信がある
あるいは願望に近いものと言い換えてもいいでしょう


殺そうとしていながらも、死ぬわけがないという思い込みがある
おそらくそれはE組の誰もが多少なり持っている矛盾した本音だと思うのです


このことはまた、E組と呼ばれる彼らのもう1つの側面をも照らし出します



特殊部隊にいた人間の訓練を受けて
現役の殺し屋とも接して
実際に銃もナイフも扱って

嫌でも「死」や「殺す」なんて概念を考えさせられる環境で


しかしそれでも彼らは中学生


教室から出て校舎に目を移せば、暗殺や超生物など一切知らされていない
普通の中学生が周りにたくさんいるのです
自我が大きくなり、意思も育ってきたことで雰囲気も変わり始める中学生という年代

「殺す」だの「死ね」だの命にかかわる概念の表現として、
本来ならもっと慎重に使われてもよいはずの言葉を好んで気軽に使う年頃です


そこでの気軽な「殺す」に、実際に殺しの現場にいる彼らは
そこにいるものにしか纏い得ない「凄味」を発揮してみせる…
なんて展開で面白さを増幅していることもありました


それは、他の中学生たちが使う「殺す」という語が
曲がりなりにも暗殺者である彼らの耳にあまりにも陳腐に響くことの描写



ですが、もしも彼らが殺せんせーを殺そうとしていながら
一方で同時に「殺せんせーが死ぬわけがない」とも思っているとしたら
彼らもまた、他の中学生たちと同じように「殺す」を陳腐に扱っていることにならないでしょうか


そのことは、ただ「殺す」という概念を表現する次元が違っているだけで
本質的には彼らもやはり中学生であることを示しているのではないかと思われるのです




ここで冒頭の問いに戻ってみると

殺せんせーを殺そうとしていながら殺せんせーが死ぬわけはないと同時に思っている彼らが
本当に暗殺に成功して殺せんせーを殺してしまうことができたなら


果たして彼らは何を感じるでしょう



簡単に想像するなら、最初は達成感を味わうのかもしれません

練りに練った計画で、ついにあのマッハの超生物を仕留めた、と



しかし、すぐに気づくのです
明日からもう殺せんせーの授業を受けられないことに


そこで初めて彼らは喪失感に打ちひしがれるのではないでしょうか

つまり、「殺せんせーを殺す」ことが自分たちにとってどんな意味を持っていたのかに
彼らはそこでようやく気がつくのです


クラスメイトに向かって「殺すぞ!」と冗談だったり威嚇だったりで発する時と
銃とナイフを手に超生物に向かって「殺す」と意気込む時と

同質なこととはなかなか思えませんが、それでも本当にそれで相手を殺してしまった時
彼らは初めて気がつくのでしょう

「殺したら取り戻せない」ことに




…実際に松井先生がどんな展開と結末を用意しているのかはわかりませんが
もしこんなことが実際にあるとすれば、バッドエンドもいいところです

少年マンガとしてはどうかという部分なのですが、あるいはそこが
殺せんせーの回想と関わってきたりするんでしょうか



まだまだこのマンガからは目が離せないですね


 




COMMENT▼

No Subject

「何をやっても死なない」…その前提があるから楽しい暗殺ができる。
その事実を認識した回でしたね。特にトドメ担当の二人。素質ゆえに麻痺してる渚はともかくww大半の生徒が暗殺とはどういうことかを改めて知ったはずです。

殺せんせーは良い先生を目指していますが生徒に好かれるせんせーを求めてはいません。標的と暗殺者、それを良くも悪くも認識しているからです。その側面が愛らしくもどこかゾっとする殺せんせーの魅力でもあるんですが、それゆえに暗殺成功が「大切な者を失う寂しさや怖さ、その手で大切な者を傷付ける愚かさを教える」ことに繋がると認識できない要素となっている。これからはそこも見所ですね。どう変化するのか、それともしないままなのか…

多分、暗殺を成功させるのは渚だと思います。さまざまな真実を知り、殺せんせー含め全員納得の上で笑顔で見送る。そういうラストを予想…というか希望します。生徒に辛い思いをさせるなら自分がと烏丸先生が考えるかもしれませんが、やはり最後は生徒の手で終わらせるのが有終の美というものでしょう。

それとは別に、こんな考えも持ってたりします…
「殺せんせーの丸い顔=月」
暗殺したはずの殺せんせーが月になっちゃってましたオチww

Re: No Subject

こちらにもコメント頂きまして、ありがとうございます。
ラグエルさん

あれだけの計画が失敗に終わったことは、マンガとしての盛り上がりもそうですが
E組にとっては「やっぱり殺せんせーは死なない」ということを再確認させられた意味も
あると思いますね。

尊敬と憧れから来る「死ぬわけがない」との願望というか思い込みが
さらに強化されたことでしょう。

ある意味で今回の計画はその伏線を張るためのシリーズだったとも言えるかもしれません。
またいずれ、こうした機会が巡ってきて、「リゾートの時は失敗したけど今度こそ」と
彼らが思って本当に本気で計画に取り組んでいざ実行の段になった時

誰1人として動揺することなく自分の役割を全うすることが果たして出来るのか。

そこに向けたタメの回だったとも思えます。


物語の終わりが暗殺の成功なのかそうでないのか、どんな形になるのかは
全く予想がつきませんが、これからも楽しみにしたいですね。

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