社会の毒 ―少年漫画症候群(ジャンプシンドローム)―

読んだらもう1回作品を見返したくなる、そういうレビューを私は書きたい

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るろうに剣心キネマ版 人誅編とのテーマ比較に見る薫の生存可能性

今月のジャンプSQにて、刃衛に刺されてしまった薫

このシーンを見た時
おそらく原作を知る誰もが、人誅編で薫が殺されてしまった(と思われた)ことを
思い出したのではないでしょうか

そしてその次に、このキネマ版では今度こそ本当に薫は死んでしまうのかもしれないと考えたでしょう


薫が刺されたシーンは明らかに人誅編における彼女の死体を意識していると思われます
つまり和月先生も人誅編とキネマ版刃衛編との関連を意識していると言えるでしょう


こちらの記事では雑誌読者の想定年齢から予想をされていましたが
ここではそれぞれの作品テーマから考察をしてみようかと思います


和月先生も語っていた、薫を生かしたことによってぼやけてしまった人誅編のテーマ
それは、人斬りの罪をどうにかして贖おうとする剣心に対して
「斬られた側」が用意したその「答」でした

すなわち復讐です

それも単なる復讐ではなく、剣心本人をどうこうしようとせずに
その傍らにいた薫を殺す
姉を殺された自分と同じ境遇に堕とすために
今現在自分にとっての姉に等しい存在を剣心から奪うこと

それこそが、復讐者である雪代縁が用意した「答」だったのです


実際に薫が殺されてしまえば
剣心の過去にあるかつての罪を贖う答の1つとして
「復讐」という事実が突きつけられる形となり

剣心がどんなに望んでもその罪は許されるものではなく
「剣心に奪われた者たち」にとっては剣心が暖かな環境で過ごしていることは
確かに耐え難い現実であることをまざまざと見せつける結果となります

それこそが「犯した罪」をどう贖うかという
物語が始まった当初からの剣心の疑問に答えるものであり、
だからこそ人誅編における薫の死は重大な意味を帯びていたのです


しかしこれは、展開としては非常に暗く鬱屈としたもので
少年マンガとして描くにはあまりにも重く救いのないものでした

そのために和月先生は作品としてのテーマよりも
読み応えを優先し、薫生存という結末を選んだわけです


さて、では翻ってキネマ版です

武田観柳の企みに始まり、刃衛によって薫が掠われてしまうことになったこの展開
薫が刃衛に掠われるのは原作でもありましたが
それはどちらかといえば偶然の要素が大きいものでした
さらに言えば刃衛が剣心を狙うことになるのもほとんど偶然

それがキネマ版では観柳の依頼の元
刃衛は最初から明確に剣心を狙っており、また剣心と闘うために薫を掠うことも
計画していました

この刃衛の計画性と剣心との死闘にこだわる異常性

そして、実際に闘ってみてもなかなか弱い剣心を覚醒させるために
薫を刺した残虐性

おそらくこの闘いの決着を持ってキネマ版は終了すると思われますが
ここから窺えるキネマ版のテーマは、実は人誅編と同様のものと考えられます


そもそもなぜ刃衛は薫を掠い、そして刺したのか

もちろんそれは、剣心と闘うためであり、その闘いをさらに愉しむためでした

「生と死の間で圧縮された一時を」
「最高密度の命の一瞬を」


ただ感じたいがために、最強の人斬りだった剣心を覚醒させようとしているのです

ここまでは、原作ともあまり変わらない動機です

が、キネマ版第2幕におけるこのコマを見ると少し違う考えが浮かんできます






キネマ版1


敗れた左之助にとどめを刺さない剣心を見て、わずかに哀しい表情を見せた後に









キネマ版2


「闘う理由の他に、殺す理由が要る」
とつぶやいた刃衛



殺す理由

誰が誰を殺す理由でしょう


刃衛が剣心を、ではないですね

剣心が刃衛を、ですね


左之を殺そうとしなかった剣心に対して、自分を殺したくなるような理由を作りたい
そうして殺し合いになればこそ、最高の愉しい闘いになる


そう考えたかもしれない刃衛にとって、薫は剣心の弱点であり大事な存在のように映ったわけです


弱点であるならば、掠えば闘う理由になるでしょう


大事な存在であるならば、殺せば殺したくなる理由になるでしょう



つまり、それは復讐です



剣心に復讐心を抱かせて、自分に対する殺意を抱かせる
それが刃衛の狙い


そして、この復讐による殺害とは、人誅編でのテーマと同様のものなのです



違っている部分があるとすれば、殺したいと思う対象が
自分の大事な存在を殺した本人かそうでないか、というところでしょうか


しかし、「復讐心」を抱いた剣心が
「不殺」を誓っている剣心が明確な殺意を持って刃衛を殺したとしたら
人斬りの罪を贖うことに対する明らかな「答」となるでしょう

自分が復讐心で誰かを殺したのなら、自分もまた同じ理由で殺されることを拒めないからです


こうした形で人斬りの罪を贖う答が示されたとしたら
それはそれはもう重く暗い話にしかならないでしょう

しかし、るろ剣世界のもう1つの在り方としては
不自然ではないと思われます


この考え方で行けば、キネマ版の展開において薫の死は必要な過程です
つまり、不可避の死ということになります


あえて希望的観測を付け加えるならば
薫が死んでしまったと認識した剣心は刃衛の望む如く
人斬り時代に回帰して圧倒的な強さを見せるが
最後の最後にかろうじて意識を取り戻した薫に気づいて思いとどまる
という流れもありえるでしょうか

剣心の方はわずかに意識の戻った薫を救うため刃衛なんかほったらかして恵の元に走り
どうにか薫は一命を取り留める…という展開ですね


キネマ版の暗い雰囲気や、エンバーミングに見る黒和月の発現などを踏まえると
薫は死んでしまいそうな感じがひしひしとあるのですが
さてどうなるでしょうか




 




COMMENT▼

No Subject

刃衛の意図は「剣心の“怒り”を煽って自分に殺意を向けさせること」と考えていましたが、確かに「“復讐心”を抱かせて」の方がテーマとして的確ですね。

薫の生死は刃衛の掌の中ですが(薫が刺されるコマを見て真っ先に脳裏をよぎったのは『幽白』の戸愚呂弟の例のシーンでした^^;)、剣心が復讐心のままに刃衛を斬ってしまうのかどうかは和月先生が見据えるテーマの着地点次第ですよね。
剣心が人斬りのまま物語が終わってしまえばそれはもう『るろうに剣心』ではなくなってしまうので、たとえ薫が死んでいても最終的に剣心が刃衛を斬ることはない…と自分は考えていますが。

いずれにしても、人誅編では回避された結末を今回の「キネマ版」で見ることができるかも知れない…と思うと気持ちの昂りが止まりません;

Re: No Subject

コメントとトラックバック、ありがとうございます。
いつもいつも見ていただいているようで、嬉しい限りです。

「るろうに」という言葉に着目すれば、薫の生死は別として剣心が刃衛を斬ることはないかもしれないですね。

飛天御剣流の真の理である「何にも属さない自由の剣をもって人々を守る」という理念と
人斬り時代に殺めた命への償いとして流浪人をやっているはずの剣心ですが、
神谷道場に居着いた理由は、原作では薫が呼び止めたせいだったのに対して
キネマ版では「観柳の追っ手の警戒」なんですよね。

そうすると薫に対する剣心の感情というのも実は原作とは違うのかもしれません。
実際剣心が薫に少しでも特別な感情を抱いているかのような描写はありませんでしたし。
だとしたら、薫が殺されたことに剣心が復讐心を抱くかどうかも怪しいと言えるかもしれません。

…考えれば考えるほどわからなくなってきました。
素直に来月を待つことにしましょう。

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