社会の毒 ―少年漫画症候群(ジャンプシンドローム)―

読んだらもう1回作品を見返したくなる、そういうレビューを私は書きたい

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名作になれなかった名作… 『ダブルアーツ』古味直志

dblart0.jpg


ダブルアーツ 古味直志


全3巻


現在ジャンプ誌上で「ニセコイ」を連載中の古味直志先生

その連載デビュー作がこちらの作品です


古味先生についてこの記事で散々語りましたが
連載デビュー作となるこのマンガについて、コミックレビューを書いてみようかと思ったのです


ストーリーについては知ってる人はよく知っているでしょう

上で触れた記事でも載せていますがこんなのです


15_禁じます



主人公の少年とヒロインの少女が、どんな時でも手を繋いだままでいないといけない


この1点のみを最大のウリとして始まったファンタジー作品でした

この設定とそれを補完するその他設定や、それを取り巻く世界観などから
名作の予感がひしひしと感じられ、連載開始当初から
行く末を期待する声が多く聞かれました



しかし


結果は23話で打ち切り


その他大勢の打ち切りマンガと肩を並べてジャンプの荒波に消えていってしまったのです


原因は展開の遅さでした


よく言えば描写が丁寧すぎて、どうしても1話における内容の進み方が遅れていたのです


世界に蔓延する奇病の特効薬となれる可能性を秘めた少年
彼を早く協会本部の研究機関へ連れて行かなければと言いながら
実際に少年と出会った街を出発するのはコミックス2巻の半ばにもなってから

それまでは協会本部の指示もありつつその街に止まって
刺客に襲われたり
少年の家に泊まってドタバタしたりしていたのです

タイトルになっている「ダブルアーツ」が作中に登場するのは
ようやく最終話間際になってから

名前が登場して、それが一通り完成した途端に物語は終了してしまったのです


この展開の遅さを指摘する時に、必ず挙げられるのが
最終話の少し前に挿入されたシスター・ハイネのエピソードです

元は画家を目指していた彼女
奇病を治療するシスターとなったことでその夢を諦めたはずが
治療の中で自分が死にそうになった時に激しい後悔に襲われるのを
手を繋いだ2人に心も命も救われるという

この作品の温かさを象徴するようなエピソードです

しかし、これだけ話の展開が進んでいない中で
あえてこのエピソードをやる必要があったのかどうかと言うのが
批判される根拠となっていました

ここでその批判を繰り返しても意味はありませんので
古味先生がそれでもあえてこのエピソードを描いた意図を想像してみましょう


ずばり

どうしても登場させたいものがあったのです


2人に救われたハイネは、再び絵筆を持つことを決意します

再出発にあたるその最初の作品に何を描くか

彼女はすでに決めていました

それは



dblart.jpg



指で作ったキャンバスに収められた2人の姿

この構図

どこかで見たことはないでしょうか

実はすでにこの作品の中で登場しているのです




これです


dblart2.jpg




そうです
タイトルの背景にある2つのシルエット
それはこの場面をモチーフにしたものだったのです

もちろんこのタイトルロゴは第1話から登場していました
つまり古味先生の中で、このハイネのエピソードは
タイトルと絡ませて作品を理解してもらうために
どうしても描いておきたい話だったと思われるのです

展開が遅いとしても
例えすでに打ち切りが決まっていたとしても

きっと描かずにはいられなかったのです

そう考えると、ただ遅い遅いとかこの話は要らない要らないとか
単純に批判することは出来ないように感じます

この物語は古味先生が子供の頃からずっと構想を練っていたものだとか

それだけの思い入れのある作品のために
タイトルロゴにまつわるエピソードをどうしても描きたかったのだとしたら

むしろ切なささえ感じてしまいそうな作品です


そんな古味先生の思い入れのあるこのマンガ
打ち切りマンガではありますが、おすすめできる作品です




※何だか物足りなかった方はこちらもどうぞ

『ダブルアーツ』を超本気で語ろうじゃないか



[タグ] 古味直志




COMMENT▼

No Subject

私もダブルアーツ大好きでした。
当時私は展開の遅さとか考えず、感覚的にこの作品を楽しんでいたので、私にとってこの作品の打ち切りは突然に感じられたので、すごくショックだったのを憶えています。ひそかに2期があるんじゃないかとも思ってましたww
正直、ニセコイ終わらせて、こっちを描いて欲しいですww

Re: No Subject

コメントありがとうございます。

展開の遅さについては実は私もそんなに感じてはいませんでしたね。
後から振り返ってみると、確かに遅いような気がするのですが。

それよりも、描かれる内容がいちいち丁寧なことが大好きで
作品の世界観にどっぷり入りこんでしまう感覚を持っていました。
ワンピースに匹敵する少年マンガファンタジーになるのではないかとの予感さえあったので
まさかの打ち切りには私も驚愕したものです。

なので古味先生の連載が再び始まるという時には
かなりの期待を持って迎えたのですが…

アレがアレなことになっていたりするせいで
どうしても素直に楽しめない部分がありますね。

とはいっても生きたキャラ作りが持ち味の古味作品でラブコメをやるのは
間違った判断ではないとも思うのですが。

触れたら即アウトの病気のヒロインが露出しまくりで悲劇扱いなとことかね。
「やりたい展開」ありきでそこまでの構成が滅茶苦茶な悪癖が作者にあるようで…。

Re: タイトルなし

コメントありがとうございます。

恐らくそういう話の作り方をされてるのでしょうね。
浮かんでくるイメージの中で、古味先生の心が躍った場面や設定を描きたくて
それを作り上げるための肉付けをしていき、そこに向かうための描写を重ねる。

描きたい内容から少しずつ話を膨らませていくというのは、
ある意味では一番マンガ家らしいマンガの作り方なのかもしれません。

あとはそこに構成力が加わればもっと面白くなるのでしょうね。

No Subject

分かります。僕がダブルアーツに出会ったのは小学5年生の時でしたが、あの当時はかなりどハマりして、もうすぐジャンプ買って読んでましたね(笑) まさか打ち切りになるとわ思いもしませんでしたが、僕の中ではジャンプ史上一番思い入れがある作品です。今思えば、あの漫画を読んでから、漫画家になりたいと思い始めたんだと思います。古味先生の作品わどれも好きですが、やはりダブルアーツが僕は一番好きですね。それに、僕以外にもこういう人達がいるんだと分かったので、とても嬉しいです(笑)

Re: No Subject

コメントありがとうございます。

読んだ途端に名作の予感がひしひしとしてくるあの感覚は、一発で古味作品に取り込まれてしまいますよね。
私も打切りにはかつてない衝撃を覚えたものですが、今でも大好きであることには変わりありません。

この作品を読んでマンガ家を志しておられるのですか?
ジャンプを目指しているのであれば、いずれその作品を読んで当ブログでレビューすることも
あるのでしょうね。
辛口感想になってしまったらゴメンナサイ(;^ω^)

No Subject

久々に読み返してみたのですが、やっぱりダブルアーツはいい作品だと思います。そして、毎回思うのですが、やっぱり最終話からの展開がやっぱり気になります。ガゼルの11人との絡みとか...

Re: No Subject

コメントどうもですー。
オトクさん

打ち切られてしまったことで伏線だけが意味深に残ってしまって、普通以上に気になる感じになりますよねえ。
俺も読み返すたびに逆に悲しくなってしまうので、最近は何か読みにくさすら感じてしまったり…

No Subject

少年ジャンプ+にて4月1日からダブルアーツの復刻連載が始まりました
2話以降は1週間で掲載終了するということなので、読む場合はお早めに

Re: No Subject

情報有り難うございますー。

もちろん読んでおりますよ。

その復刻連載のおかげか、ダブルアーツの検索で当ブログにいらっしゃる方が増えているようです。
こんなにもこの作品のことを気にする人がいるというのは嬉しいことです。

No Subject

復刻連載のおかげ人気が出てまた連載してくれたら嬉しいんですがねw

No Subject

そのままジャンプ+に月一ペース若しくは不定期でもいいから続き描いて欲しい。

復刻連載が

ジャンプ+で週一でやるんだったら、ちょうどニセコイが終わってそのままダブルアーツの連載に入れるくらいのタイミングかな、と思ったんですけど、1日1話のハイペース掲載なんですね。そんなに慌てなくてもいいのに(笑)

でも、うちの近くの本屋さんでも、ニセコイの隣にダブルアーツが常備されるようになりましたし、ダブルアーツを知る人がもっと増えるとうれしいです、

Re: No Subject

復刻連載のお陰で、4月に入ってからこの記事へのアクセス率が倍増しております。

ただ、この記事の内容だけではこの作品の面白さは全然伝えきれていませんので、現在また別の記事を製作中です。先月末から少しずつ書き始めて、まだ掛かりますが、何とか復刻連載の間に書き上げたいと思っております…。


とりあえず全話に「いいジャン!」をしておりますが、そういう反応が多かったら復活を考えてくれますかねえ編集部…

No Subject

こんにちは、復刻連載を読んでからここを見てます。
雑誌連載時は確かに「展開遅いなぁ」と思ってました。
少年ジャンプのファンタジー作品にしては、アクションが地味だったのも痛かったと思います(ブリーチでさえ、他の死神登場前は打ち切り寸前でした)。

でも読み返すとセリフの一つ一つに熱がこもっていて、特に件のハイネのエピソードはシスターの悲壮な運命と、それを乗り越える希望が描かれた名場面だと思います。
自分の夢を諦めて命を遣ってトロイを抑えて、それでも間に合わない時がある。結局はハイネは助かりましたが、胸が痛くなりました。
ニセコイでもるりとおじいちゃんの話みたいな、優しさと自意識の間で揺れる繊細な少女の心情を描くのが非常に上手いと思いましたね。

あとダブルアーツの頃の方が絵が丁寧な気がするのは気のせいでしょうかw

Re: No Subject

コメントありがとうございます。名無しさん

展開の遅さはやはり感じられたんですね。
スタートダッシュが重視されるジャンプにあっては、どうしてもマイナス点ではあったでしょう。

しかし、そうなんです。
ちゃんと読み返すと、すごくじっくり描かれていて、ぐっとくるシーンは確かにあるんです。
ハイネのエピソードは、タイトルロゴの登場という意味とは別に、「エルーと同じ状態のシスターと出会ったらどうするのか」という疑問への回答が示されるという意味もあったものと認識しています。

ここでエルーが「キャパオーバーになったシスターの毒をも全部自分に吸収する」という策を思いついたことで、この先出会うシスターたちの毒をも全部吸えるという結構重大なことが含まれるエピソードになったことを考えると、「この展開の遅さの中でやるべき話ではなかった」とは必ずしも言い切れないかなとも思います。


絵柄の方は…
まあ好みというか。
どっちかと言われると、俺もダブルアーツの絵柄のほうが好きだったりします。
小野寺さん以外

この先出会うシスターたちの毒をも全部吸える

ちゃいますよ。キリがそれとなく言ってますが…
俺の力のキャパを超える可能性(危険性)もあるんだぞ、と。
二度目はキリが許しません。だったら3人でトリプルアーツだこんにゃろう!ってなりますw

Re: この先出会うシスターたちの毒をも全部吸える

おっと、言われてみれば確かにそうですね。
これはちょっと想像が短絡的でした。

他にどうしようもないときの最終手段として、ならありえたかもしれないですね。
トリプルアーツはさすがにアレかと思いますがw

ダブルアーツの絵柄

古味先生、今でもダブルアーツの絵柄で描けると思いますよ。あれが、本来の古味先生の絵だと思っています。

今のニセコイの絵の方が、むしろラブコメ用スペシャライズドだと思います。

そしてニセコイで、変顔の使い方でもすばらしい技量を身につけてこられたので、たとえば、最終話のエルーの「気付いてくれた時分かって下されば…」の所のキリの顔とか、今だったらもっと表現力が上がっているように思います。

一話からリライトでも、私は全然かまいません♪

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