社会の毒 ―少年漫画症候群(ジャンプシンドローム)―

読んだらもう1回作品を見返したくなる、そういうレビューを私は書きたい

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実力ある主人公がモテるとは限らない… 『保安官エヴァンスの嘘』栗山ミヅキ

保安官エヴァンスの嘘


保安官エヴァンスの嘘 栗山ミヅキ

割と迷いなく買ってしまいました…

これはまたなかなかいい発想の作品があったものですね

主人公の能力と行動理由、その原点が非常にわかりやすい上に
でもことごとく思惑が裏目に出てしまう違う意味での主人公特権発動がしっかりコメディとして成立していて
とっても読みやすいです



モテたい
その一念だけで射撃の腕を磨き、見事に凄腕の保安官として有名になった主人公エヴァンス

しかし、モテたいと思っていることを知られること自体がモテない要因たりうるため
彼は必死になってその本心を隠しつつ、それでもどうにかして美女とお近づきになろうとする…

本心を悟られないためにクールぶろうとする態度と凄腕保安官という肩書は見事にマッチしているのに
考えていることは「モテたい」

ある意味究極の葛藤ですよね


出会った美女と仲良くなろうとするのに、いかにして「モテたい」という本心を悟られずに信頼を得るか

もちろんエヴァンスは美女を騙して弄ぼうなんてことを考えているわけではありません
ただ美女とお近づきになりたい
それだけです

モテたい、彼女がほしい

男読者にとってこれほどわかりやすい主人公も他にいないでしょう
それでいて実力は確かなものを持っており、その評判は最強の保安官と名高いのですから
ワンチャンどころかツーチャンもスリーチャンもあるはずという

なのに、何故か上手くいかない
この逆方向に発動する主人公特権が、エヴァンスを悲しく追い詰める

カッコつけて口説こうとしたはずなのになぜか全く違う方向に解釈されて、結局それを否定できない
作品タイトルである「エヴァンスの嘘」とは、この時にエヴァンスが涙を呑んで本心を隠す言葉と仕草を表したもの

主人公の目的、動機、設定、物語の展開、作品タイトル、どれもが非常に高いレベルで噛み合っており
とっても面白いコメディだと思います

何というか、すごく安心して読めますね

どんな話になっても、エヴァンスは大体カッコいい展開になるけど決して美女と一線を越えることはない
主人公のカッコよさとモテなさを両立させている点は見事という他ないでしょう


しかし1つ難点を挙げるとするならば、ナレーションがもうちょっと何とかならないかと思いました

この手の作品におけるナレーションは、神の声として読者にその場面を客観的に示す役割を持つものですが
そこでの言い回しや表現によってはただ客観性を提供するだけでなく話の雰囲気すらも左右できる重大な要素です

そんなナレーションにおける言葉の選び方が、まだちょっと拙いかなと思ったのですよ


たとえば

「エヴァンスはホメ殺されかけている。」
とか

「エヴァンスは目的を見失いかけている。」
とか

ともにエヴァンスがどんな状態になっているかを読者に客観的に示したものですが、
なんか文末が気になるんですよ



「エヴァンスは褒め殺されかけていた。」
「エバンスは目的を見失いかけていた。」

現在形の「~ている」よりも、こちらのほうがより滑稽さが強調されるんじゃないかと思いますがいかがでしょう



「超嬉しかった。」
とか

「超楽しみだった。」
とか

「正論だった。」
とか

この辺はまさにビシーッと決まってたナレーションだったんですけども、ちょいちょい違和感のあるナレーションもあったのが残念でした


「結果 この言い回しにまとまった。」
とか

「以後、彼は飲みもしない酒を備蓄する。」
とかも好きですねえ


それと本作品の特徴としては、レギュラーヒロインとなるオークレイに触れておかなければならないでしょう

モテたい、けど上手くいかない
が連続することになる本作は、基本的にエヴァンスが出会う美女がレギュラーキャラとなることはありません

1人の美女に執着してエヴァンスが追いかけたりするようでは主人公のキャラが破綻してしまうからですね

しかし、それでは物語に縦軸がなくなってしまうという問題があります

美女と出会う、エヴァンス頑張る、カッコよくはなったけどお別れすることになる
この展開が繰り返されるわけですから、パターン化・マンネリ化の危険を最初から孕んでいるわけです

しかもその限界は4話5話くらいしか持たないと思われる非常に期限の短いもの

そこに3話から登場してきたオークレイは、この物語に縦軸を与える巧妙なヒロインでした


賞金稼ぎという立場からエヴァンスをライバル視している彼女
しかしそれがただのライバル視にとどまらずに、普通に男として意識している雰囲気を出しつつも素直になれない、というのが
彼女のヒロイン力を毎回上げまくることになっています

エヴァンスもエヴァンスで見た目は可愛いオークレイをしっかり意識しており、
お互いに「相手が望むなら付き合っても良い」という某天才たちの頭脳戦ラブコメみたいなことを思ってる始末

別の美女を登場させたり、あるいはオークレイ視点からエヴァンスを観察してみたりすることで
第1話ではモテたいエヴァンスが空回りするコメディだったのが、主人公とヒロインが絶妙な距離感を保ち続けるラブコメに変化しているんですね

モテたい主人公がひたすら空回りするコメディではネタ切れも早いですが、ラブコメならベタな展開がいくらでも使えます
オークレイというヒロインを登場させたのは実に上手い判断だったといえるでしょう


ただし、そこにも致命的な欠点になりかねない問題が潜んでいます

エヴァンスの誠実さが問われる可能性があることです


エヴァンスのことばかり意識してしまう初心で純なオークレイに対して、エヴァンスの方は美女ならとりあえず仲良くなりたい男です
それは、そもそもの主人公の設定や男としての心情からすれば仕方ない部分ですが、一方でエヴァンスもオークレイを意識しまくっているのも事実で

それなのに、出会う美女とひたすらどうにか仲良くなろうとし続けてしまうのは、
いざオークレイとのフラグを回収するような展開になりかけた時に読者印象的な障害になってしまうのではないかと危惧されるわけです

基本は上手く行かないわけですが、初対面の美女相手に頑張ろうとするエヴァンスの姿が
本命がいるのに浮気しようとする軽い男みたいに見えてしまう可能性が心配されるのです

エヴァンスを意識するオークレイの可愛らしさが上がれば上がるほどに、その危険は大きくなるのではないかと

オークレイがエヴァンスを意識している度合いと、エヴァンスがオークレイを意識している度合いとが、
エヴァンスがオークレイ以外の美女に現を抜かす分、結構な違いとして読者に感じられてしまうのではないかと危惧されます

平たく言うと、ハーレム系ラブコメにおける主人公の性格問題的なアレですね

いや、別にこのマンガは全くハーレム系ではないんですが


考えすぎかな?
そんな心配まで抱いてしまいましたが、ひとまず2巻を楽しみにしたいと思います





[タグ] ラブコメ




COMMENT▼

No Subject

まあ拙い部分があっても致し方ない。だって読切2本から初連載でコレだもの。

この作品において欠かせない第3者。それはエヴァンスの親父ですw
親父殿の発言がいちいちツボを突いていて納得とツッコミの嵐ですw

エヴァンス×オークレイ×美女
この絡みの懸念ですが、1巻チャプター7、8がそれに当たる話ですよ。
お互いのすれ違いが上手い事働いているので分かり難いかもしれないですが、
7話:それで納得していい動きではない
覗きのための動きがオークレイには捕縛に繋げる動きに見えて株を上げる。
8話:金に興味はない
カッコイイと思って言ったのに言った相手には効かずオークレイには効いた
2巻以降もこの上手いすれ違いをやってくれますのでご安心を。

またも言い忘れ

個人的に今後期待している話。

2話であった誤報「ミランダ・ケリーとの結婚間近」絡みで本人が出てくる話を待っています。
どう転がしても面白い話になると思うんですよねwww

エヴァンスの心中とオークレイとの関係性

どうもこの辺難しいところですよね
エヴァンスのモテたいという感情と、腐れ縁であるオークレイとの関係

「まぁ向こうがその気ならそうでもないけど?」 という状況

素直に互いの感情を聞き出すのが無理な、ウブな二人が織り成す、動けば成功するのに成功しない状態

エヴァンスの人柄上本人から踏み出すということはよほどのことがないとなさそうですし、この状態は続くと思います

しかし私はエヴァンスのこの状況を、好きな女がいるのに動かず……という状況とは思いませんかね

おそらく彼はその気が確信に変わった時、本気で彼女を落としに行くことでしょう

しかしそれが確信になるまでは己の「モテたい」という感情と親父の教訓の力を借りながら、女の子を虎視眈々と狙うでしょう

後記事のタイトルを見て思ったことなのですが、多分エヴァンスはモテてはいるけど、タイミングに恵まれないだけなんじゃないかなあと思います

それくらい不運な出会いが多いw

とりあえず私もラグエルさん同様にミランダ・ケリー、それと護衛回の馬車のお嬢様の再登場には期待したいです

Re: No Subject

読み切り2本から初連載ですか。
そんな経歴だったんですかこの作者さんは。

それは確かに一部の拙さもやむを得ないですね。

しかしそんな経験が浅い状態で、これだけ絶妙な構造の作品を持ってくるとはなかなかの逸材ですね。
この作品の連載が続いていけばかなり化けるんじゃないでしょうか。


懸念されるオークレイとの関係については、お二方とも特に心配はされて無いようで。
俺も記事中ではああ書きましたが、そこまで考えるほどのことではないんじゃないかとも思っておりましたので、後押しをいただけて良かったです。

ミランダ・ケリーは絶対登場しますよね。そこでエヴァンスがどんな嘘でごまかそうとするかはとっても楽しみにして良さそうです。

各4誌での新人比べ

個人評価ではありますが
「サンデー>>マガジン>>(越えられない壁)>>ジャンプ=チャンピオン」
だと思います。アニメ化してる作品ももしかしたらジャンプより多いんじゃないかな?
で、調べてみたらこんなの見つけました。
http://nendai-ryuukou.com/article/050.html
やだナニコレ…名作だらけなんだけどwww

Re: 各4誌での新人比べ

発行部数こそジャンプのが多いと記憶してますが、作品の質としてはサンデーのが好評なんですかね。
俺でも結構聞いたことのある作品ばかり並んでますな。

ジャンプとチャンピオンが同じくらいっていうのが、俺がチャンピオンコミックスも割と気に入ってる要因の1つだったりするのかなと思ったり。

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ジャンプ歴21年。ジャンプ最新号を読んでる時は、ゾーンに入ってると思う。

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