社会の毒 ―少年漫画症候群(ジャンプシンドローム)―

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鬼丸国綱対草薙剣、再び その勝敗の行方 2017年週刊少年ジャンプ25号感想

鬼丸国綱対草薙剣、再び


いやもう、今週の火ノ丸相撲は激熱でしたねえ
火ノ丸相撲だけ何回読み直したかもうわかりませんよ

激熱とか胸熱とかそんなフレーズばっかりしか出てこないくらいに盛り上がりすぎてました

何というか、今週はもう他の作品の感想書く気が起きません

頭の中が火ノ丸相撲だらけになってしまったおかげで、こんな特別記事を書いてしまいましたよ



 






いよいよ訪れた団体戦決勝大将対決


そこに対峙するのは、主人公火ノ丸とその最大のライバル久世草介
わざわざ使われた「結びの一番」との表現は、間違いなく大相撲千秋楽が意識されているものでしょう

並び立つ東西の横綱が、優勝を懸けて激突するという千秋楽の大一番を想起させる演出です

これから数週に渡って描かれる「鬼丸国綱対草薙の剣、再び」の勝負は、
おそらく作中史上において最も苛烈、最も熾烈、そして最も壮絶な戦いとなるでしょう

これまで紡がれてきた物語を踏まえれば、この戦いこそはその集大成であり、
これ以上の展開はもはやありえないと思えるほどに待ち望まれた瞬間でした

ならばこそ気になるのはその勝敗の行方です


本格的に戦いが始まる前に、火ノ丸が負けた1度目を読み直しておこうと思ってコミックスを開いたんですよ
そんで読み返していたんですけども

この2度目の大一番の勝敗を決定づける大事な大事な伏線があったことに気がつきました

きっとそれは川田先生も計算の上で描いてきたものだと思われます
ならば、これから描かれる火ノ丸対久世の2戦目、川田先生の中でその勝敗はすでに決まっていると考えられるのです

本稿は、今週号の感想に代えて、川田先生が意図して伏線としていただろうその要素を明らかにすることで
この大一番の勝敗を予想することにしてみましょう



「力士」とは


説明にあたってまず前提となるのは、「力士」という者がどういう存在であるかです

この前提があってこそ、火ノ丸と久世における決定的な違いが理解できるといえるでしょう

ではそれはどういう存在であるかと言えば、作中でこのように端的に表現されたことがありました


刹那を生きる者

力士とは、刹那を生きる者

土俵上に存在できるただ1人の勝者
その勝利に向かって互いに激突すれば、決着まではわずか数秒あるいは数十秒
その短い時間に全身全霊を発揮するために全てを費やす男たち
濃厚で激しい一瞬を重ねる彼らは、確かに刹那を生きるというに相応しいでしょう


では、その刹那の勝負のために、なぜ彼らは全てを費やすことができるのでしょうか
ほんの僅かの勝負時間に、なぜ彼らはそれほどまでに魅せられるのでしょうか

これについては、主人公火ノ丸がこう述べていたことがありました




だからこそ滾る

ただただ純粋に己を試される だからこそ、その勝敗に滾る

これこそが川田先生の思う「相撲」という競技の魅力であり本質であるのでしょう
武器も防具も何もないただ剥き出しの己を試されるからこそ、その勝敗には大きな大きな意味があるのだと

この言葉の通り、火ノ丸をはじめとして仲間たちもライバルたちも、ひたすら己を鍛え上げることに執念を燃やしていました

そこで問われるは「心技体」
「試される己」という抽象性を、心と技と体という3つに分類して具体化したものですね
すなわちそれは鍛えるべき具体的な対象となるものです

ただしそれは、稽古でのみ鍛えられるわけではありません




心技体とは

何を思うのか
何を身につけるのか
何を食うのか

稽古場だけに限らない全ての瞬間における行動によって「己」は形作られていくのです
作中の吹き出しで太字になっている3要素それぞれが「心技体」に呼応しているのは、もちろん偶然ではないでしょう

すなわち、「心技体」とは人生そのものであるというのが作中における見解でした



すなわち人生

土俵上でぶつかり合って試されるのは、それぞれの「心技体」すなわち人生である

だからこそ、最強と謳われる「横綱」に誰もが憧れるのです
人生を賭しての勝負に挑み続け、勝利を掴み続けた結果たどり着く頂点という高みであるゆえに

作中では、「心技体」を通して現出するそれぞれの人生に対して、「生き方」という表現を与えていました


「生き方」の勝負としての相撲




それが私の生き方

中学生になったばかりの火ノ丸に、現役時代真っ向勝負の相撲を取り続けた理由を聞かれて返したこの言葉
作中世界で、日本人最後にして歴代最強の横綱と呼ばれた大和国親方が口にすることで、「生き方」という単語が作中に初めて登場しました

さらにこの場面では、小さな体で同じ相撲を取ろうとする火ノ丸もまた同じことを思っていることも描かれました

どんな相撲を取るのか
どう相手に立ち向かっていくのか

人生が「心技体」によって表されるものならば、「生き方」とはすなわち鍛えた「心技体」をどのように外に出すのかに他なりません

同じものを感じても、同じものを身につけても、同じものを食っても、
そして同じものを目指しても、どう在りたいかまでは同じになるとは限らないわけです

相撲に限定して言えば、それは土俵上での戦い方、戦闘スタイルと言ってもいいでしょう
突きで押していくのか、機動力で翻弄するのか、といった違いですね

目指す先は皆「横綱」だとしても、そこに至るまでにどんな道程を選ぶのか
つまりはどんな相撲で横綱を目指すのか
それは個々の力士たちで違いがあって当然の部分であるわけです

もちろん作中でも、登場する全ての力士たち特に国宝たちにおいて大なり小なり描かれてきた部分でしたが
火ノ丸と久世との勝負に限っては、その相違がことさらに強調されている面があります

なぜなら、火ノ丸と久世が1度目の勝負を果たした関東新人戦において
その勝負が実現するまでに至る過程が、そのままそれぞれの「生き方」に繋がっていたからです


過去の自分を超えた

別の道の自分

大きな自分



久世との勝負に至るまでに、「過去の自分」を乗り越え、さらに「別の道を選んだ自分」をも超えてみせた火ノ丸
その次に相対することとなった久世は、火ノ丸にとっては「理想的な体の自分」だった事実
久世に勝ってこそ、今までの「生き方」が報われるとともに、その先に光が灯るという節目の戦いでした




それが僕の生き方

久世もまた、アマチュアの大会に参加することを父親より禁じられていたはずが
火ノ丸の相撲を見て血が騒いだ結果、父の言いつけに背くという決断を下し、勝利の報告とともに父に謝罪
同時に、「生き方」の決意を伝えていました


ならばこそ、「再び」であるこの結びの一番でもそれぞれの「生き方」が問われるはずです

火ノ丸は、今度こそ勝つことで今までの今までの苦労と努力を報われるものとしたい、
ここまで支えてくれた師と仲間たちに恩を返したい、何より自身の体格で唯一の方法であるプロ入り資格を獲得したい

強い国宝たちがひしめき合ったこの大会で結果を出してプロ入りすることこそが、自身も周囲も納得させる方法でした


久世は、ここで火ノ丸に勝つことが父に伝えた決意を実践することに他なりません
インターハイで優勝して高校横綱に、というのは既に実現されているわけですが、
一度は負けた天王寺に雪辱を果たした火ノ丸を再度ねじ伏せてこそ真の高校横綱と言えるからです

個人戦では、火ノ丸を倒した天王寺に勝った久世が優勝しました
しかし、団体戦において天王寺に勝った火ノ丸が今目の前に立ちはだかっている
一度は倒した相手とは言え、ここで負けるようでは胸を張って高校横綱とは自負できない
そんな気持ちがあることでしょう


お互いに負けられない気持ちがある中、それでも勝者はどちらか1人

その緊迫感と緊張感が否応なく物語を盛り上げてくれているわけですが…



しかし、実はここまで振り返ってきたコミックスの中で、この勝負の行方を示唆するセリフがあったのです


「生き方」の証明


それがこれ



負けてどうするか

負けてどうするか それこそが「生き方」だからな…

火ノ丸と久世との勝負において激突するものが、他の力士たちよりも濃い意味での「人生」や「生き方」であるとするならば
このセリフの持つ意味は重いでしょう

この言葉の主は、他でもない大和国親方です
「それが僕の生き方です」という息子の決意を聞き届けた後、火ノ丸の今後を心配した息子に返したのがこのセリフでした

「生き方」が問われる戦いで、それが真の意味を発するのは「負けた後」であること
大和国親方のこの言葉を真とするなら、今回の結びの一番においては、より「生き方」が問われる方が負けるということができるでしょう

ではそれはどちらか

「生き方」を問われると言えば、基本的には主人公の方です
そもそもどんな作品であっても、物語の中心となるのは主人公であり、
何を思ってどう行動してどう反応するかといった主人公の生き様を描いていくのが通常の作劇だからですね

ならば、この結びの一番では本作の主人公火ノ丸の「生き方」が問われるでしょうか
すなわち、火ノ丸が負けることになるでしょうか


 い い え

それはないですね

なぜなら、既に火ノ丸はここまでたどり着くのにもう充分過ぎるほど「生き方」を問われ続けてきています
そして、師と仲間たちの支えもあって、その苦悩全てに打ち勝って今この場に臨んでいます

身長が伸びずに泥にまみれた中学時代
それでも諦めず高校生になれば、久世に惨敗
しかし諦めずに新技を身に着けても天王寺に惜敗

選び、歩んできた道にはことごとく壁が立ちはだかって、その先へ進むのを阻もうとしてきました

けれど怯むこともなくめげることもなく、信じた道を突き進んできたのが火ノ丸という主人公

どれほど高い壁があろうとも、どれほど苦しい茨の道があろうとも、
自身の決めた「生き方」を曲げずに火ノ丸はここまで来たのです


では対して久世はどうでしょうか

久世の「生き方」は、父に宣言したとおり、インハイで優勝し高校横綱となり、
「大和国の息子」という誇りを胸に角界に入ること
もちろん、角界に入ることがゴールではなくその頂点である横綱になることも含まれているでしょう

そして宣言通り、前年度高校横綱だった天王寺を倒して新たな高校横綱の地位を彼は手にしました
名塚記者のインタビューに答えていたとおり、来年あたりにでもプロ入りを実現すれば、まさしく有言実行と言えます

言い換えると、ここまで久世の「生き方」は特に何らの挫折なく進んできているのです

全く何の苦労もなかった、とはもちろん言いません
血統と才能と体格に恵まれたことでトントン拍子にここまで来た、なんてことはないでしょう
アマ大会への出場を父から禁じられていた時期や、その禁を破ろうと葛藤・決意した瞬間など、
久世にも苦しみはあったはずです

しかしそれは「生き方」を決意する前の苦悩であり、決意した「生き方」を否定される・覆されるといった経験は
久世にはまだ訪れていないと考えられるのです

すなわち、ここで火ノ丸に敗れることで久世は自身の「生き方」を真に問われることになるのではないか


歴代最強と言われた偉大な父の背中
その血を受け継いだ事実を胸に抱いて父と同じ横綱を目指そうとする久世にとって、
ここで火ノ丸に敗れることは「最強の横綱の息子」という誇りを喪失させるものとなるのではないでしょうか

もちろん現役時代の大和国とて全く無敗であったわけではないでしょう
少なくとも薫山親方は金星を取ったことがあると言ってましたし

しかしそれでも、最強・常勝の横綱大和国・その息子であるとの誇りを抱いて角界入りしようとしている久世が
1度勝った相手でもある火ノ丸に負けることは、自身の「生き方」を決意させるきっかけとなった火ノ丸に負けることは、
その誇りを奪うものとなるのではないか

そして、思い悩むこととなるのではないでしょうか

こんなことで大和国の息子を名乗っていいのか
こんなことで横綱を目指していいのか
こんなことで父にどんな顔をすればいいのか

「大和国の息子であるとの誇りを胸に力士となる」こと
火ノ丸に負けた時、久世には自分自身が決めたこの「生き方」の重さが容赦なく襲い掛かってくるはずです

それこそは、「負けてどうするかが『生き方』である」との大和国親方の言葉を如実に描写するものとなることでしょう



…てなわけで長々書いてきましたが、俺の思うこの勝負の展開予想は火ノ丸が勝つ ということで
皆様どうかこの予想の当たり外れも含めて今回の大一番を読んでいこうではありませんか

COMMENT▼

No Subject

アツいですねぇ。
いやはや。
勝敗が見えないっすわw

そう言えば、ラグエルさんとぱいなぽーさんは、これが作品最後の勝負になるんじゃないかって言ってましたけど。

No Subject

半ばお約束でここは潮が勝つと思っていましたが、なるほど生き方を問われた経験差が勝敗を分けるか…
ますます目が離せないですねこれは!

Re: No Subject

特殊な感想記事となりましたが、コメントありがとうございます。

「生き方を問われた経験差」が勝敗を分けるというラグエルさんのまとめが非常にわかりやすいです。助かります(;^ω^)

今までの展開を考えれば、ここまでお膳立てされて主人公が負けるなんてことは流石にないと思えますよね。
ただしそれは単なる主人公特権というわけではないのだということをわかってほしかったのが今回の記事でした。

とは言え、ここまで盛り上げるともはやこの後にはこれ以上の展開を用意することが出来ないと思われるのも事実。
「このチームで取る最後の相撲」だと大関部長が言ってましたが、作中でまともに描かれる最後の相撲となる可能性も高いというのは俺も思います。

付け出し資格の獲得という火ノ丸の目的としては、厳密にはこの後の全日本アマ大会でそれなりの成績を残さないといけないわけですが…
天王寺と久世を倒したことをもって大会出場を認められることが、そのまま事実上の資格獲得として描かれるでしょうか。

大会の様子まで描こうとすると未登場の社会人の強豪とかインフレが加速することになるので、ここで終わっておくのが物語としては充分美しく完結できると考えられるんですけども。でもまだもうちょっとこの漫画読みたいなーって言う気持ちもあるので悩ましいですね。

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