社会の毒 ―少年漫画症候群(ジャンプシンドローム)―

読んだらもう1回作品を見返したくなる、そういうレビューを私は書きたい

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食戟のソーマ 「視線の向き」を使った創真とえりな様の距離感の演出

視線0


本日はまたしてもソーマ考察です

やっぱり最近はソーマ考察がやたら捗るな

テーマは、創真とえりな様の「視線の向き」を使った演出
明らかに作者の意図が介在していると思われる非言語描写を取り上げてみようと思います



[タグ] 食戟のソーマ






実は似た考察を以前にも書いたことがありました

食戟のソーマ えりな様と田所さんの「視線の向き」を使った距離感の演出



2015年WJ33_sp


月饗祭でのこのコマについて、「創真とえりな様の目線があえてズラされている」ことを指摘し、
そこにはどういう意図があったのかを考えてみた記事です

この時は、田所さんも含めてそういう演出がなされたのだと考えたのですが
コミックスを振り返ってみると、どうやらこの演出は田所さんよりもむしろえりな様のためにあったものではないのかと思ったんですね

すなわち、創真と正面に向き合ってのやり取りが、えりな様は何だか多く描かれているのですよ

それだけなら別にこんな記事を書くほどの意味を見出すことはなかったと思いますが、
コミックス5巻を読み返していて、ふと気づいたことがあったのです

それがこの場面




視線1

地獄の合宿全プログラムを終えて、ようやく帰路につこうという時
それぞれ部屋に忘れ物をしてしまったことで取りに戻ってる間にバスは行ってしまったという

仕方なく別の車に乗り合わせて帰ることになったあの時の場面です


最初の編入試験の時以来、創真を目の敵にしていたえりな様
やむなく一緒の車に乗ることになったとは言え、もちろん気を許すはずはありませんでした

創真の方はといえば、毛嫌いされていることは別に気していない様子ですが
特段仲の良い相手というわけでもないことで、どっちかといえば仏頂面

そのため、お互いに目を合わせようとすることなく、それぞれ窓の外を見てこの時間をやり過ごそうとしていたわけですが…


ここで二段目のコマがおかしいことに気づいた人は見事です


大きく描かれている一段目の1コマ目
えりな様は向かって左側に、創真は右側に座っていますね

しかし、それが二段目になるとえりな様は向かって右側のコマに、創真は左側のコマに
上のコマにおける位置関係と逆のコマ配置になっているのです

普通なら、せっかく示した位置関係を次のコマで崩すようなこんな描き方はしませんね
キャラの顔をアップにしない「引き」の構図は、それぞれの場面におけるキャラの位置関係をはっきり見せることで
その場所やキャラの立ち位置を読者に示してやるという役割があるからです

その漫画の基本に則って、ホテルの駐車場から車の中に場面が移ったここでは
しっかり車内の位置関係図が示されました
それが上記画像の1コマ目

加えて、それぞれの表情によってその場面におけるキャラの感情をも示す役割を果たしています

しかし、それが次のコマに行くと位置関係が逆転している
せっかく示した位置関係を、コマの配置によって崩しているんですね

普通なら、こうして引きの構図のコマでキャラの位置関係を描いたならば、それに沿ったコマ割りやキャラの配置をするはずです
カメラアングルによって、向かってどっちに誰がいる、というのがころころ変わってしまっては読者に混乱を生じさせるからです

ですがここではあえてそれが行われました

ではその意図はといえば


創真とえりな様が向かい合っているように描くためですね


座っている実際の位置とは逆のコマ配置になった結果何が生じているかというと
お互いに顔を背けて窓の外を見ているはずの2人が、顔を向き合わせているようになっているんですよ

その近さはまるで互いの顔を見つめているかのよう


作画の基本から外れているように見えたコマ割りで、主人公とヒロインが目を合わせているように見える構図が生まれていた

これに気づいた時、以前の考察記事のこともあって、「ひょっとして」と思ったわけですよ


これは、えりな様憧れの料理人が実は創真の父親であるという爆弾情報が読者にのみ明かされる重要な場面でした
車中の会話でも尽く創真を否定していたえりな様でしたが、実はこんなところに意外な事実があるのだという
えりな様ルートの隠し玉が読者に開陳される瞬間だったわけです

すると、ここで実際の位置関係をズラしてまで描かれた創真とえりな様の「擬似的見つめ合い」は
えりな様ルートの存在と展開可能性が確かにあることを象徴してみせた演出だと言えないでしょうか

「こんなに嫌い合ってますけど実は…」という事実と、それによって想像される可能性
それを読者に予感させるための「見つめ合い」だったのではないかと思うのです


で、そんなことを思った日には、次に「じゃあ他にもそういう場面が実はあるんじゃないか」と考えるのが
深読み好きの習性です

早速コミックスを洗い直して、探してみました

そしたら、あったんですよ
コミックス1巻から順に読んでいって、探してみたら、確かにあったんです

創真とえりな様の顔のアップが隣同士のコマに並んでいるようなページはいくつもありましたが、
上記の車内のシーンに続いて「ここには確かに作者の意図があるだろう」と思われたのはこれでした




視線2

選抜本戦
準決勝で美作との食戟を勝利で終えた創真が、意気揚々とえりな様に向かって宣言してみせるシーンです

創真が階段の下からえりな様を見上げつつ、えりな様はそれを階段の上から見下ろしつつ、という場面ですが
コマの大きさが同じくらいであり、かつ同じ段に描かれていることで
2人の位置における高低差がほとんど感じられないようになっているんですね

まるで同じ高さの場所にいるかのようなのです

創真は見下された姿に、えりな様は見上げられた姿に描かれていることで
かろうじてどちらが階段の上と下にいるのかはわかりますが、しかしそれもまた
演出の1つになっています

創真の姿は階段の上からえりな様が見ているもの
えりな様は階段の下から創真が見ているものなのですね

そうやってお互いの目に映るお互いの姿を描きながら、しかしその目線はぶつからないように描かれている


コマが同じ大きさで、かつそのコマ内における描かれ方もコマ全体を使ってめいっぱい描かれていることで
それぞれ見上げている、見下ろしているのにそんな感じがあんまりしない構図になっているんですね

たとえばこれが、コマの位置を少しズラしてこんな感じになっていたら
階段の上と下にいて、片方が見上げて片方が見下ろしていて、という様子がはっきりわかることでしょう




視線2-2

そしてこのコマ配置なら、見上げる、見下ろす2人の目線もしっかりぶつかることで
お互いに「対峙している」感が醸し出されたことでしょう

加えて、互いの位置の高低差がそのまま料理人としての実力の高低差をも象徴する…
なんていう解釈も可能になったはずです

「私は君の遙か格上にいるの」と階段の上から言うえりな様のセリフが、そのまま実力差を暗示するという寸法ですね


しかし、実際にはそうは描かれませんでした
これもまた、2人の関係の本質がそういう「ライバル関係」ではないことを示そうとしたものではないかと考えられるのです


そして、次が本稿のはじめにも載せたこれですね



2015年WJ33_sp


月饗祭で、中華研の対抗に苦戦する創真と彼の赤字を心配するえりな様

しかし、やはり目線はぶつからないように描かれています

食戟のソーマ えりな様と田所さんの「視線の向き」を使った距離感の演出

この記事でも語りましたが、おそらくはあえて目線が合わないように描かれていることは
2人の間にはまだそれだけの距離感が在ることを示そうとしているものではないかと思います

創真に対していつのまにか退学退学と言わなくなり、創真もまた、苦手意識は多少ありつつも
品の試食や模擬店訪問を頼みに行くくらい親しみは持っている

序盤に比べて2人の関係が明らかに進んでいることを見せつつも、まだまだ距離感は遠くにあることを示そうとしたものではないかと


で、まだあります

次は同じく月饗祭の途中に描かれたこのシーン




視線3

えりな様の模擬店に突然やって来た薊
それによって驚くほどに萎縮してしまったえりな様の前に、のんきな顔をしてやってきた創真

読者からすると、父を名乗る何か胡散臭い新キャラにえりな様が窮地に追い込まれている場面であり
そこに主人公がやって来るというのはある意味王道の展開でした

やって来た創真の顔を見て、緋沙子ちゃんが超笑顔を見せたのはそういう読者の気持ちを表したものですね

で、この構図ですけどね

今までは微妙にズラされていた2人の視線がここではバッチリ向き合う形になっていますね
2人ともがカメラ目線となっていることで読者と目線がぶつかる構図になっており、読者を通して目が合うようになっているのです

もちろんそれは、王道の展開に対する読者への訴求を意図したものでしょう

ヒロインのピンチなところにやって来る主人公という王道
創真と目が合うことで読者は「主人公」の存在感を意識することになり、
えりな様と目が合うことで、読者は弱々しくなったえりな様にいつも以上に感情移入してしまう

そしてこの瞬間の2人はもちろん、目が合っている

直接的にではなく、読者を通して間接的に成されたそれは、
地獄の合宿編後の「擬似的見つめ合い」とは また別の形での見つめ合いだったと言えるでしょう

そうすると、ここからまたえりな様ルートが動き出すことになる

その予感は、「囚われの女王編」が大々的に始まったことで確かなものとなりました



そして今週ですよ
何でこんな話をやりだしたかって言えば、これまで語ってきた演出と同じ範疇に入る構図が今週にもあったからなんですよ

今まで書いてきたようなことは、実はこの上の画像である萎縮しきったえりな様とのんきな創真のシーンを見てから
何となく思っていたことなんですが、そこからさらに今週もう1回同じ演出の構図があったことで
「ほほう…」と思ったからなのです

どんなだったかといえば、これですよ



ついにぶつかった視線

隠し玉情報がとうとう明かされたことにより、そのショックからいまだ立ち直れないでいるえりな様
どうにも冷静でいられないえりな様に対して、創真がいつも通りのあっけらかんとした顔で返事を返した場面です

そうなのです

ここでは、とうとう創真とえりな様の視線がぶつかる構図になっているんですね

今まで書いてきた内容を踏まえれば、これは見逃せないことですよ

しかもここでは、わざわざえりな様側のコマを下にズラすことによって
その視線がぶつかるようになっているのです

「あとひとつだ」のシーンにおいて、高低差がある位置関係ながら
同じ高さと大きさのコマで描かれていたことと対照的ですね

ここでの位置関係は、えりな様はベッドに腰掛けているのに大して創真はその横に立っているというもの
階段の時とは目線の位置が逆になっているわけです

これは、料理人としての格を謳った階段の高低差に対して
心理状態における優劣を「座り込んでいるえりな様」と「立ち上がっている創真」という形で表現したものでしょう

そして、創真は別にその状態に対して優位性など感じてはいませんから
そこに隔たりなど生じさせる必要はなく、自然に目線を合わせることができる

ただし、ここではえりな様の瞳だけが創真の方を見ていますね

実は顔の向きは創真と同じ方になっていて、正面から向き合っているわけではないんですよね
これが左下を向いてる創真に対して右上を向いてるえりな様の構図だったら、目線も顔の向きも一致してて
完全に見つめ合ってる形になったんですけども

まだそれは早いということなのでしょう

とは言え、今回のこれでは擬似的でも何でもなく2人の目線が合いました

ということは、ここからまた2人の関係性と距離感を縮めることになる具体的な展開が近く訪れるのでしょう
鍵となるのはおそらく城一郎との因縁と事実でしょうか

えりな様も薊も憧れる城一郎という男
えりな様も薊も否定しようとしている創真という料理人

しかし2人は親子である事実

これをめぐってのえりな様、薊それぞれの反応が2人の関係に大きなものをもたらすことになるのだろうと思われますが…

さあどんな風になっていくでしょうね


COMMENT▼

rexelさんこそ慧眼の持ち主でしょうに!

合宿後のあの違和感だらけのコマ配置。あれを見る限り意図があってのことというのは明白。
情報不足から決して交わることのなかった二人の心のずれ、それが暴露によって交わりを持った。
「関係性の繋がり→視線の繋がり」
を意味しているのは間違いないでしょう。

先を越されてしまいました・・・!

 流石はrexelさん。
 お気付きになられてましたか。
 こういう風に構図的にもキャラクターの関係性や立場の図式が組み込まれているからこそ、深読みし甲斐があるんですよね♪
 ちなみにこういった、構図が暗示している関係性はカラーイラストにも扱われてるんですよね。
 特に私が気に入っているのは、第93話(単行本12巻収録)の見開き扉絵です。
 アリスの飛び入りというアクシデントによって、創真・えりな・恵の関係性が上手く構図に反映されているな~と感心させられました。
 創真とえりなの関係性は「対称表現」、そして創真と恵は「並行表現」によって描かれていますが、彼らの眼差しと共に気持ちも重なるのは一体いつになるのでしょうかね?

このサイトには三柱の神がいる…

ayumieさん
mickさん
栗うさぎさん

どちらが月読か分かりませんがw紅一点の栗うさぎさんが天照なのは間違いないな。
で、rexelさんが伊邪那岐と。

Re: rexelさんこそ慧眼の持ち主でしょうに!

皆様コメントありがとうございます。

結構ガッツリと書いた考察だったので割りと反応が気になっていたんですが、とりあえず「いやそんなわけはない」という指摘はなさそうで、よかったです。

栗うさぎさんも同じことを思っていたというのがありがたいですね。「よし、なら大丈夫だろ」と何か勝手に思えてきます。

おそらくこの手法は今後も折々で描かれるのでしょうね。その時その時を見逃さずに気づいていければ、「どうにかして作品を面白くしようとする作者の意図」の1つを汲み取ることができるのでしょう。


…しかし、いつか記事にしたようにこの作品における俺の推しメンは田所さんだったはずなのにえりな様関係の考察ばっかり捗ってしまうのはどうしてでしょう。田所さん側のルートに関係する要素が意外とまだ明かされていないのでしょうか。

No Subject

なるほど

ayumieさんとmickさんと栗うさぎさんね・・・


rexelさんを含めた4人は天 才 じ ゃ っ た か(c)

皆さん良く読んでますなぁ

私はそこまで要所要所深読みして読んでないので記事が上がるまで目線の事実にまるで気づきませんでした

Re: No Subject

1ミリな人のそのセリフ、汎用性半端ないなww

でも本当に天才的なのは、そういうことを「分かる人には分かる」という形でさりげなくもしっかりと描けている作者であることは間違いないんじゃないでしょうか

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