社会の毒 ―少年漫画症候群(ジャンプシンドローム)―

読んだらもう1回作品を見返したくなる、そういうレビューを私は書きたい

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食戟のソーマにおける物語構成その1 主人公の在り方とその目指す先

主人公の姿


先日のコミックス記事を書いていて、おさらいしてみたいと思った『食戟のソーマ』における物語の構成
さっそくやってみることにしました

連載の開始から本誌での今の展開に至るまで、描かれてきた各シリーズがどのような役割や位置づけを持っていたか、
あるいはどのような効果を果たしたか、後の展開にどのように繋がっているのか

振り返ってみると、実に見事な構成でもって紡がれてきていたことがわかりました

そこにある物語の柱は2本
まず今回の記事では、1つ目の柱を中心として見ていくことにしましょう


[タグ] 食戟のソーマ






連載開始~合宿編開始まで


話の都合上、今までの展開を便宜的呼称のもとに区分していきながら考えていきましょう

まずは連載が始まった第1話から、最初の長編となる地獄の合宿編が始まるまでの物語です


コミックスでは1巻から2巻のラスト前までとなるこの部分
特にシリーズ名などは付けられないこの部分における役割は、まあわかりやすいですね

主人公云々などといった小難しいことは抜きにした、連載スタート後の人気獲得のためのスタートダッシュ

人気作品が鎬を削る少年ジャンプにあって、その中の一枠を確かなものとするために
序盤から確実な人気を狙っていくこと
設定やキャラの説明や紹介といった基本的役割は別にして、それが連載開始直後の話における至上命題でした

もちろんそれはどの作品でも同じであるわけですが、そのための方法としてこのマンガが採ったのが
「料理を食べたリアクションにより、女性キャラの服が脱げる(イメージ図として)」というものでした

現在の連載陣の中でも屈指の画力を誇る佐伯先生の実力を思う存分発揮してもらって、出てくる女性キャラたちを
ただひたすら脱がそうとする

1話の地上げ屋のおねーさん、2話のえりな様に始まり、極星寮に来れば若きふみ緒さんや
吉野さん、榊さんといった形で次々と女性キャラを脱がしていましたね

そして合宿編に入る直前、締めの脱がしとなったのは褐色巨乳な肉魅

勝ち気で褐色で巨乳な肉魅を敗北させて脱がす(イメージ的に)という展開は
非常にわかりやすくカタルシスを演出するものでした

それがどの程度のジャンプ読者への訴求効果を持つかは想像に難くないでしょう

しかもそれは、料理マンガで料理を食べた時の味の表現として描かれることにより、
作品としての個性にも繋がるものとなったのです


スタートダッシュは確かに成功したのであり、今やコミックスは15巻にも達するほど安定した人気を得ることになりました



地獄の合宿編


このマンガにおける初の長編として、2巻の最後から5巻の半ばまで繰り広げられた「地獄の合宿編」
このシリーズが作品に果たした役割もまた、単純明快といえるでしょう

すなわち、「確かな人気の獲得と維持」


この合宿編が始まった頃から、いわゆるエロいリアクションが抑え目となっていくんですね
それは、スタートダッシュ・掴みとしての役目を充分に果たしたからです

旨い料理を食べた女性キャラをイメージ的に脱がすというわかりやすい演出によって、
とりあえず読んでみようかと思ってくれる人はそれなりに確保できたと思われます

今度は、それをエロいリアクション以外の要素で固定ファンとする必要がありました
なぜなら、ひたすらエロいリアクションだけで人気を維持していこうとすれば、リアクションの中身のエロが
どんどんインフレ、または陳腐化していくことは目に見えて明らかだったからですね

エロいリアクションとはわかりやすいネタだけに熱しやすいが、冷めるのも早い
作者はそれをわかっていて、ある程度のところで一旦エロを抑えることで期待値を維持しつつ、印象の転換を図ったのです

すなわち、「少年マンガへの転換」
わかりやすいエロばかりを見せようとする低劣な作品というわけではなく、この作品は「少年マンガ」であること
その印象転化を図ったのが地獄の合宿編でした

リアクションの面で言えば、鴨のオッサンとか柿の種なイケメンとか、ガチムチな魔法少女とか
明らかにギャグ調な要素も入り始めていくことで、コメディの側面も強めて

同時に、タクミ・アルディーニや四宮といった「主人公が真剣に勝負する相手」も登場してきました

これは、序盤の話では最強状態だった主人公の強さを相対化することと、シリアスなストーリーを展開させるために必要なキャラですね
タクミは最近ギャグキャラっぽい雰囲気もありますが、田所さんに「創真くんみたい」と認めさせた実力は確かなものです

こうしたライバルの存在によって生まれるのが少年マンガらしい王道熱血なバトル
その極めつけが、田所さんを守るため遙か格上とわかりきった相手に勝負を挑んだ四宮との非公式な食戟でした

「食戟であんたを負かしたら 田所の退学 取り消してくんないすか」

あの見開きのカッコよさといったら、主人公の面目躍如でしたね

料理人として超人的なスキルや実力を持つというキャラばかりが登場してくる中で
最も読者に親近感を持たせるキャラだった田所さん

その田所さんがとっても露骨に死亡フラグを立てて、見事にそれが発動したところで
主人公が真正面から啖呵を切ってそれに反抗する

ヒロインを守るために主人公が体を張る

まさに少年マンガの王道と言うべき熱い展開でした


さらにその後には、ミスによって課題不合格による退学寸前という窮地に陥りながらも
最後まで諦めることなく、また自らの極限までの実力を見せつけることでその逆境を跳ね返すという展開も見せました

これもまた、絶体絶命のピンチから機転によって状況をひっくり返すという少年マンガの王道と言うべき展開ですね

このようにして、単なる「何かエロい料理マンガ」から「王道の少年マンガ」へと転換を図った本作

ここに、このマンガは最強系主人公の無双っぷりを追いかける作品から
飽くなき向上心と頂点や理想を求めて成長しようとする「主人公」に焦点を合わせた物語として変化することになります

言い換えると、エロいリアクションから「主人公」に読者の目を向けさせることを意図し、見事に成功したのが
この地獄の合宿編だったのです



官能の唐揚げ編


ということでここからは、物語の全体像は主人公創真の姿勢やビジョンへと収斂していくことになります


官能の唐揚げ編は、地獄の合宿終了後に描かれた創真の地元の話でしたが、
退学のかかった緊張感ある遠月学園での話ではなく、地元でのシリーズということで
まるで中休みのようなものなのかと思われたエピソードでした

しかし1つだけ読み取れることがあると思います

それは、創真の腕が「ゆきひら」を継ぐのには割と充分になっていること


創真が遠月学園に通い、城一郎は海外へ旅立ったことで一時閉店となっていた「ゆきひら」は
しかし周辺の人々にとって再開が切望されている店でした

連休を利用して一度帰ってきた創真はそうした人々の要望に応じて、少しだけ店を開けたわけですが
もちろん城一郎はおらず、料理するのは創真1人です

理屈で言えば「まだまだ城一郎の味には遠いな」となる可能性もあったわけですが
実際には「この店の味が恋しい」とまで言っていた彼らに、創真の料理は充分な満足を与えていました

ここで地元の人々に微妙な反応をされて変な雰囲気にさせるのも主人公の格を不要に落とすだけなので
展開として当然といえば当然なのですが、それでも事実をそのまま受け止めれば、普通に「ゆきひら」を営業するだけなら
今の創真にも可能であると捉えることのできる場面だったと言えるでしょう

すなわち、遠月学園で第二席まで昇り詰めたエリート料理人だった城一郎が、その料理のすべてを賭けて辿り着いた大衆料理の味
それだけなら創真もそれなりに会得しているということになるわけです

しかし、それは実際には城一郎があらゆる技法を駆使して到達した大衆料理の技術とあり方の表面だけをなぞったもので
ただ習った通りのことをしているだけとも言える状態でした

だからこそ、城一郎は創真を遠月へと編入させた

自分がゴールだとしたところをスタート地点とする息子に、そこから出発してもらうために


官能の唐揚げ編にて描かれた「ゆきひら」ちょこっと再オープンには、こんな深読みができるのではないかと思います



選抜編


そして、合宿編を超える長編として展開されることになった秋の選抜編
唐揚げ戦争のところで登場させた遠月十傑第九席となる叡山を橋渡しとして、
十傑が運営を取り仕切る大イベントとして行われたこの行事は、先ほどの官能の唐揚げ編にて「ゆきひら」を継げる実力を示した創真が
新しい技術と料理概念、さらに新しいライバルに出会うシリーズでした

普段同じ寮生として暮らしている面々の本当の実力や、創真にとっては全く未知の技術と能力を駆使して調理にあたる者たち

合宿編で出会うことになった「ライバル」が、一気に増えることになったのがこの選抜編でした

いわば、選抜編は地獄の合宿編の拡大シリーズと言うことができるんですね


それぞれのお題に対して、自分の知らない技術や能力を持った実力者たちと出くわして、
自分が知っていた技術や世界がいかに狭かったかを痛感すること

「料理人は、出会うことでしか前に進めない」

城一郎が語るもう1つの真実を、全編を通して示したのがこの選抜編だったわけです

そうしていつか、「自分の料理のすべてを捧げたいと思える」誰かと出会うこと


選抜編で繰り返された多くのキャラの実力披露と激突は、そうした数多くの出会いの一端として意味されるものでした

そしてそれは今後も変わらないでしょう
新キャラが登場するたびに、その人物の持つ技術や実力に創真が「出会う」こと
その人物に同調したり、反目したりして、創真が「自分のあるべき姿」を見出していくこと
そうしていくことによってこそ城一郎の言葉の前提となる「自分の料理」が出来上がっていくわけです


だからこそ、選抜編で創真が最後に負けを喫したことは必然的展開でした

どんな料理人になるべきか、どんな料理人になりたいのか
ただ漠然と親父を超えることしか考えてこなかった創真にとって、何が「自分の料理」なのかは
全く手探りなものだったからです

※関連
食戟のソーマ 連載第1話に見る選抜決勝結果の必然性



スタジエール編


選抜決勝で敗北したことで、自身の技術と意識をさらに高みに運ぶことをより感じるようになった創真

創真に限らず、どの生徒たちも新しい技術や世界に触れることを考え出す選抜の後に、
プロの現場での研修となる「スタジエール」を持ってきたことは、展開の必然性としても、
また学園のカリキュラムとしても非常に納得の行くものでした


ここでは、どんな料理人になろうとするのか、ひいてはどんな店を持ちたいと考えるのか
選抜での結果を受けて、自分自身の将来像に思いを馳せるようになった創真の姿が描かれました

研修の1店舗目となる洋食の三田村では、店長三田村さんに「ここをどんな店にしたいですか?」と問いかけた創真
選抜を経験する前の創真なら、間違いなくこんなセリフは出てこなかったことでしょう

2店舗目となった四宮の店では、寝る間も惜しんでフランス料理の技法を必死に修得しようとする姿が描かれました

料理人としての第二次成長とも言うべき「目指すべき姿を模索する」ことが、創真の中で始まったのです

実際の現場に触れられるスタジエールの日々は、創真にとって面白くて仕方ない毎日だったことでしょう
だから研修を終えて極星寮に戻ってきた時には、今までよりも一皮むけた、今までよりもさらに好戦的な姿勢へと変化していたわけですね

覚えてきた技術を試したい、触れた世界を思い出したい

対戦という形でそれを果たしつつ、対戦相手との出会いを新たな出会いとする一石二鳥の方法が食戟だったわけです


その好戦的姿勢は、自然、遙か格上の存在である十傑にも向いて行くことになります



紅葉狩り&月饗祭編


今まで3人しか明かされていなかった十傑の顔ぶれ
その残りが一気に登場してきた紅葉狩りエピソードは、好戦的な姿勢の創真の目を十傑へと向けさせる契機となりました

「紅葉狩り」と称して、選抜本戦まで残った8人と十傑のメンバーを顔合わせさせる
料理人同士の新しい「出会い」の場となるこの行事は、「出会うことによる進化」を総帥仙左衛門もまた確信していることを示しています


そうして次なる目標として「十傑」を見据えた創真に、おあつらえ向きな勝負の場として訪れたのが月饗祭でした


具体的に標的とされたのは、第八席久我先輩
「何か1つでも勝ってるものがあったら勝負を受けてやるよ」と漏らしたことで、創真に狙われることになったわけですが

十人の十傑の中で下位の席次とはいえ、それでもおいそれと勝てるほど甘い相手ではありませんでした




ここで十傑の実力を認識した創真が、次に何を考えるか…

…というところで、創真がどんな料理人を目指そうとするかという部分の話は今止まりかけているのが
現在の状態ですね

なぜなら、それと大きく関わることになるだろう「激震」が学園に訪れたためです

総帥仙左衛門の更迭と、新総帥の就任


この展開は、本稿では触れなかった「もう1つの柱」と関係する部分であり、同時に、これまで述べてきた「主人公のビジョン」という柱と交差するものでもあります

すなわち、この次の記事で述べる「もう1つの柱」と両輪で成り立つ展開であること


その2の記事では、本作に存在するもう1つの柱とともに、
本誌での今の展開がどのような位置づけのものとなるのか、その見通しを述べてみることにしましょう



→ 食戟のソーマにおける物語構成その2 主人公とヒロインたちとの関係と「裏テーマ」

COMMENT▼

初めまして。

どうも初めまして。
ずっと前から御ブログを拝見していましたが、今回思い切ってコメントさせて頂きました。
『食戟のソーマ』のこれまでを振り返っての考察は私も色々思い溜めていただけに、この度の御記事は大変興味深く拝見させて頂きました。書いてくださって本当にありがとうございます!
相も変わらず深い考察と鋭い着眼、そして見事な文章表現ですね。いつものことながら感嘆させられました。
熱い真っ直ぐさだけでなく深い重厚さもある故に大変面白い『食戟のソーマ』ですが、この作品は“原点”と“頂点”を巧く組み合わせている作品だと私は感じています。
それはストーリーだけでなくキャラクターにも。
rexelさんの考察を刺激に、私も考察を重ねながらこの作品を楽しんでいきたいと思っています。
次の記事も、今からとっても楽しみです。(^^)
これからもどうか頑張ってください!

No Subject

この漫画の構成で恐ろしいモノが一つ

合宿編の最後の写真で薊さんの名前が有った事です
あそこで既にこの展開を考えていたとするなら鳥肌物の伏線・・・orz

Re: 初めまして。

皆様コメントありがとうございます。

とくに初めましてな栗うさぎさん。以前からお読みいただいていたようでありがとうございます。
そちらのブログにもおじゃましてみました。ソーマ記事にずいぶんと力を入れられているんですね。それでいて私とは少し異なる視点でもあるようで、とっても興味深く読めました。

今回の記事はまだ前半部分だけといいますか、この後の記事によって一応の結論となる予定です。ジャンプ発売日を勘違いしていたことでずいぶん間が空いてしまっているんですが…。

ともあれ、次の記事をお待ちください。ひょっとしたら栗うさぎさんの見解とは異なる話となっているかもしれませんが…


>妄想屋さん
おそらくはあの時点でここまで構想されていたと思いますよ。今回のえりな様のシリーズは物語上避けて通れない話ですから、初期からこういった展開があることは予定されていたはずです。

そこまで連載が続くかどうかが問題だっただけで、きっと作者としては満を持して描いているのだろうと思います。

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