
さて、昨日に引き続きまして本日もラブコメのお話です
今回ネタとするのは『食戟のソーマ』
料理バトルを軸とする物語の裏のテーマとして、創真をめぐるラブコメが確かに存在していると考えて以来、
この手の話はもう何度も繰り返してきていますが
今回もそこに類する考察となります
テーマは、視線の向きを使った距離感の演出
今週と先週において、それぞれえりな様と田所さんとの創真の距離感が
暗黙的に演出されていたのです
まずは先週号に載っていたえりな様とのそれを見てみましょう
先日のベストショット集にて取り上げましたこちらの画像

売り上げランキング最下位を叩きだした創真を諌めようとするえりな様に対して、当の創真が見せたナチュラルな表情
予想された通りに圧倒的劣勢な状況にも関わらずあっけらかんとしている創真に、きょとんとした顔を見せるえりな様
おそらくはお互いに「本当にそれでいいの?」という気持ちだったでしょうか
しかしその疑問の中身が全く異なっていることによる本質的な違いが、ぶつからない視線という形で描かれている
向かって右上を見上げようとする創真ですが、読者から見るとえりな様がいるのは左側
向かって左下を見下ろすえりな様ですが、読者から見ると創真がいるのは右側
それぞれのコマに描かれた表情の見つめる先にその相手がいない構図になっているわけです
それにより、2人のコマの間には何となく断層のようなものが感じ取れるんですよね
右上を見つめる視線と左下を見つめる視線
正反対を向いた視線の先がその中間にあるコマの境目を必要以上に強調し、その間に断層があるかのように錯覚させるのです
これがもし、えりな様と創真の位置が逆になっていれば全くそんなことは感じられず、
むしろ視線がぶつかることになるコマの真ん中には何やら2人の通じ合ったものさえ感じさせるかのような演出となっていたことでしょう

こんな具合にですね
しかし、実際にはこうは描かれませんでした
それは、創真とえりな様の間にある「今ひとつ分かり合えない感」を示すためではないかと思うんですね
創真を下町出身の低劣な料理人と決めつけて、実際の資質や実力を見ようとしないえりな様と
同い年ながら驚くほどに高慢で、何かあればすぐ自分の高尚さを口にするえりな様を苦手と言い切った創真
理解し合うにはまだまだ足りないものが2人の間にあることが、この断層に示されているのではないかと思うんですね
では田所さんの場合はといえば
今週こんな構図がありました

久我先輩の中華料理に対抗する品を考えている2人を、正面から見た図
えりな様の場合と同じく横に並んだコマではありますが、2人の視線の向きはえりな様のそれとは異なっていますね
すなわち、2人で同じ方向を見ているわけですよ
視線がぶつかって、互いに見つめ合っているかのような構図になっているわけではなく
2人で同じ方向を見つめながら同じ問題の解決策を見出そうとしている
断層があるように感じられたえりな様と違って、明らかに田所さんは創真の近いところにいますね
ご丁寧なことに、コマの境目には吹き出しが重なっており、分かれているコマを繋ぐ役目を果たしているかのよう
恋愛とはお互いを見つめることであり、結婚とは2人で同じ方向を見つめること
そんな言葉をどっかで聞いたことがあるんですが、あるいはここで意図されているのはそうした真理なんでしょうか
互いを見つめ合う状態にすらもまだ届いていないえりな様と創真
田所さんと創真もまだ厳密には恋愛関係にはありませんが、この学祭に自ら出店し、採算を取ろうとしているのは
以前の考察で触れたように、いつか創真と一緒に店を切り盛りしていく将来のモデルケースと言えるものでした
食戟のソーマ 創真をめぐる3人のヒロインたちの勢力図
そこでは、「店の主人」としての創真を支えて助けようとする田所さんは「女将さん」であり、
2人が同じ方向を見つめていることは至極当然と捉えることができるわけです
こうした視点で見ると、現時点ではえりな様よりも田所さんのほうが創真に近いところにいることは間違いないといえるでしょう
とは言え、まだまだこの裏のテーマは明確には顕在化されておらず、現時点でどうこうだからといって
特に大きな意味があるかといえばそんなこともないでしょう
しかし、やはり作者の中には「そういうつもり」があることを窺わせる演出としては充分なものではないかと思います
本作のダブルヒロインとも言えるえりな様と田所さん
2人が今後どう創真と関わっていくことになるのか、まだまだ目が離せないですね
でも個人的にはまだえりなも田所も創真と恋愛面で凄く発展してるかと言えるかというとそうでもない
えりなの場合はrexelさんが言った内容とほとんど同じで、田所の場合は・・・目標という意識は強いけど、それが密接に二人の仲の進展に関わるような描写が深まってないからです
今まで創真と田所は同じ目標へ向かい頑張る描写が確かにされて来ました
しかし、それは創真と田所の料理人として成長させる為の糧になる描写ばかりで、互いの存在への意識の変化に繋がる描写が取られてないのです
恋愛と言うよりは、友情に近い部分のような気がします
創真はまだ田所を一緒に切磋琢磨する仲の良い友人、くらいにしか取っておらず、恋愛的意識を見せていません
創真が田所の気持ちを自覚、もしくは田所がその恋心を自覚し、創真に対し一歩を踏み出さなければ、これ以上恋としての進展はないのではないでしょうか
これについてはえりなも同様かと思います
自分の感情を恐れず勇気を出して表に出すこと、それが、二人のヒロインが進展する上での第一歩です