社会の毒 ―少年漫画症候群(ジャンプシンドローム)―

読んだらもう1回作品を見返したくなる、そういうレビューを私は書きたい

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ニセコイ それぞれのヒロインの「ニセコイ」と「マジコイ」を考える

ニセコイからマジコイへ


コミックス19巻がもうすぐ出るというのに、実はまだ18巻のレビューをしてないという状態ですが
どんな風に書いたものかなかなか浮かんでこないので、今回の考察を18巻感想に代えることにします

テーマは、それぞれのヒロインたちに存在する「ニセコイ」と「マジコイ」について

『ニセコイ』というタイトルは、「ニセの恋人関係」となった楽と千棘、
そして楽の本命の相手となる小野寺さんをめぐるラブコメであるというのが当初からの解釈ではありましたが
しかし今週の展開を見て、実はそれだけにとどまらないものがそれぞれのヒロインたちにあるのだということに
気がついたのです


※18巻の記事に代えると言いつつ、18巻に収録されている回以降の話も出てくるので
コミックス派の人は注意























羽の告白とその結末


で、早速今週号の本誌での話ですが

羽が告白し、それに対する楽の返事まで描かれました


今までのストーリーを追ってきていた我々からすれば、楽の答えは至極納得の行くものではありましたが
しかし、それを聞いた羽の言葉が非常に興味深いものでした




羽のニセコイ1

この気持ちは本物なのかどうか、と疑問だった
これは本当に恋なのか、わからなかった



羽のニセコイ2


楽を好きだと思っているこの気持ちは、「ニセモノの恋」なんじゃないかと思った


ここですよ

ここで使われた「ニセモノの恋」という表現
それはまさしく、タイトルの『ニセコイ』なわけです

しかし先に触れたように、タイトルの意味は千棘と楽の「ニセの恋人関係」をめぐるラブコメというのが
普通に考えられるものでした

ですが、それだけに囚われずに考えてみると、自分の気持ちに対して「本当にこれは恋なのか」と
「ニセの恋」を疑ってしまうことも「ニセコイ」の範疇に入るものとは言えないでしょうか

だとするならば、作中で明確に「ニセの恋」と言えるのは恋人のふりをしている楽と千棘のみですが、
それぞれのヒロインたちの心中で自身の恋心が疑われることもまた、「ニセコイ」ではないか

この場面、この表現を聞いてそう感じたのです


そうして羽以外のヒロインたちの様子を見てみると、それぞれの胸中に抱かれている恋心とは別に
「ニセコイ」を感じさせるものが確かにあったのです


千棘の場合


千棘については説明するまでもないですね

物語が始まった当初から存在する「ニセの恋人関係」
それこそが千棘にある「ニセコイ」でした

その存在故に、いつしか「マジコイ」になってしまった自分の本音をなかなか表に出すことができず、
また少し思い切って見た時でさえも「恋人関係がニセモノである」ことが理由で楽に伝わらない、という
残念な事態となっていました



鶫の場合


そんな千棘の応援キャラであり、しかし同時にヒロインズの一角を担っている鶫の場合は
もう少し事情が複雑になります

そもそもが千棘に仕える身である彼女
その千棘を差し置いて自らの恋を叶えようなどとは「思ってはならない」というのが、彼女の理解でした

同時に、「それにあんな男を好きであるとかそんなわけはない」と恋心そのものを認めようともしていないですね

これが鶫の「ニセコイ」です

羽のように恋心に疑問を持つどころか、根本から否定してしまっていること
それを認めることは、自身のプライドだけでなく生涯の恩人とも言うべき千棘に対する背信にもなりかねない

そう考えると、頑なに自身の恋心を認めようとしてこなかった鶫は、常に「ニセコイ」状態だったと言うこともできるでしょう
初登場以来ずっと、楽に惹かれる本心を偽り続けてきたわけですね

その「ニセコイ」の行き着いた先が、18巻に収録されているこのシーンでした



鶫のニセコイ

貴様が
お嬢の恋人でよかった

「お前などお嬢にふさわしくない」と言って登場してきた鶫が、楽を認めた瞬間です

しかしそれは、鶫が自身の恋心を認めたものではありません
むしろ、千棘と楽の関係を認め、解し、喜びさえ抱いた瞬間でした

すなわち、あくまで自身の恋を偽り続けること
「マジコイ」であることを拒絶し続けた鶫の感情の行き先でした



マリーの場合


ではマリーはどうか

鶫と違って、千棘との恋人関係を聞かされても全く意に介することなく
楽へ猛烈なアプローチを続けてきた彼女は、間違いなくその胸に「マジコイ」を抱いていました

しかし、そんなマリーでもそんな自身の恋心に対して負の感情を持ったことがあったことが先日語られましたね




マリーの不安

それは、疑問というより不安でした

10年もの間ひたすら想いを募らせ続けてきた相手が、今となっては変わってしまっているんじゃないかという
恐怖にも似た感情

その恋心と楽の存在だけを支えに生きてきたのに、肝心の楽が自分の知らない人に変わっていたとすれば
恋心の行き先がなくなってしまう

深く、濃くなった恋情が行き先をなくしたとすれば、どこに向かうことになるか

その事実を受け止め、認識した上で健全に昇華できれば望ましいことでしょうが、
しかし10年もの間それだけを支えに生きてきたマリーに果たしてそれが可能だったか

健康でない体を抱えてこの先を生きていくのに、何を頼りにすればいいのか

屈折した感情が辿り着く恐れがあったのは、想い出だったでしょう
すなわち、現実にいる変わってしまった楽ではなく、想い出の中の楽に縋ってその後の生活をおくろうとする

そんな絶望の可能性が、マリーの「ニセコイ」でした


しかし、実際には楽は全く変わっていなかった

10年経っても、楽は変わらず自分が好きになった楽のままだった



マリーのマジコイ

だから、マリーの恋心は一気に加速しました

絶望的な「ニセコイ」の可能性が一切消え失せて、募りに募った想いが爆発して止まらなくなった
ただ一直線に楽を求め続けた

そこには、「ニセコイ」は存在しません
「ニセの恋人関係」や「恋心の否定と拒絶」という「ニセコイ」を持つ千棘と鶫に対して、
マリーにはもう「ニセコイ」はないのです

だからひたすらに楽を追いかける

あるのは「マジコイ」だから
本当の恋だから
本気で好きだから



ヒロインズの中でマリーが一線を画した存在であることは、こうした点からも窺えるわけですね



小野寺さんの場合


さあそして小野寺さんですよ
この順番にしたのはもちろんわざとです

理由は簡単


小野寺さんには「ニセコイ」がないのです


マリーのように、かつてはあったものが今はなくなったというのではありません
最初から無いんです

羽のように、恋心の正体が実は別の感情なんじゃないかと疑ったことも
鶫のように、恋心の存在を認めず拒絶したこともありません
千棘のように、ニセの恋人関係であることももちろんありません


小野寺さんだけなんです
最初から「ニセコイ」が存在しないヒロインは



あったとすれば、せいぜいこれでしょうか



シャフ寺さん1

放課後のジュリエット

足のケガで舞台に出られなかった小野寺さんのために、楽が思い立った2人きりの本番

空は夕焼け
場所は屋上
演じるのは恋人
状況は2人きり

限りなくロマンチックなシチュエーションのもとで始められた2人だけの舞台は
演じているのが恋人同士の役であったことと、2人きりという状況によって
楽と小野寺さんが作り上げた「ニセコイ」であったと言うことができると思います


とは言え、小野寺さんに内在するものとしての「ニセコイ」は存在していないんですね


その原因は言うまでもありません


小野寺さんは初めからずっと「マジコイ」だったからです


楽に中華丼をぶっかけてから次第に仲良くなっていった中学時代
おそらく3年生になった頃にはもうすっかり好きになってしまっていたと思われます

そこから高2の今に至るまで、ただじっと胸に秘め続けている恋心
秘めているのは恥ずかしくてまだ言えないというありふれた理由であり、そこに特別なものはありません


そういえばかつて、小野寺さんとマリーにはヒロインとして共通点があると考察したことがありました

ニセコイ 小野寺さんとマリーにある1つの共通点とそれがもたらす効果


「キャラとして登場してきた時から、楽のことを好きだった」というのがそれなんですが、
それを別の視点で見ると、「ニセコイ」を持っていないヒロインということになるのでしょう

初めから持っていなかった小野寺さんと、その可能性を捨て去ったマリー

小野寺派を名乗りつつ、俺が次第にマリーにも惹かれていくところがあったのは、
そうした部分も関係しているんじゃないかと思います





…で、楽を好きなヒロインが実はまだあと1人いますね



春ちゃんの場合


春ちゃんですよ

小野寺さんの妹春ちゃん

彼女には「ニセコイ」があるかどうか


相手を楽と知らずに「王子様」と言って恋慕していたこととか、あるいは、
その王子様を楽が「無二の親友」と言って自分のことだと言い出せていないこととかを
相手を勘違いしているという意味での「ニセの恋」と解釈する、というのはできそうですが、
しかしそこは重要な問題では無いんです


なぜなら、春ちゃんは「マジコイ」を抹消しようとしているから


鶫のように、恋心を認めないのではありません
楽に対する自分の気持ちを恋だと認めた上で、その恋心を消し去ろうとしているんですね

大好きなお姉ちゃんのために


これは他のヒロインたちには存在しない性質です
「ニセコイ」を何とかした上で「マジコイ」を伝えたいと思うのではなく
そもそも「マジコイ」を消し去ろうとしていること

それは「ニセコイ」の有無を問うよりも重大なことであるでしょう

同じ応援キャラとしても、「マジコイ」を認めようとしない鶫と明らかに異なる部分です





…で、作中にはあともう1人いますね
「ニセコイ」と「マジコイ」の間で悩み、葛藤する人物が


誰って

楽ですよ



楽の場合


主人公として、このラブコメの中心に存在する楽
彼もまた、「ニセコイ」と「マジコイ」を抱えています

ここで言う楽の「ニセコイ」とは、千棘との「ニセの恋人関係」ではありません
もっと彼の胸中に根ざした本心と関わる問題

これですよ




楽のニセコイ


羽の告白を聞いて、動揺しつつ「俺には好きな人が」と言おうとして頭に浮かんだもの

小野寺さんの名前と、千棘の顔

名前と顔が一致しない…とかではなく、矛盾するものが浮かんできた頭の中に
楽は大いに衝撃を受けることになりました

ここまで見てきた流れを踏まえれば、ここで古味先生が描こうとしているのは
楽が自分の恋心の中身を疑うこと、すなわち楽の「ニセコイ」であるということになりますね

羽のように恋心の正体を別の感情なんじゃないかと疑うのではなく、もっと単純に
「俺が好きなのは本当は」という疑問

最近の展開で千棘に対する楽の感情が何やら意味ありげな感じで描かれているのは、小野寺派としては、
ただ物語の結末を悟らせずに続けていくためであると解釈しているわけですが

しかし、ここまで述べてきたような「ニセコイ」と「マジコイ」の視点を持ち込んでみれば
それは楽にとっての「ニセコイ」と「マジコイ」を演出するためのものであると言えるでしょう

主人公の本心として描かれることになるそれこそはタイトルと直結するものであるはずで、
その一連の流れが描かれることによって、『ニセコイ』という作品は完成するといえるのではないでしょうか





…といった形で、タイトルとともに各主要キャラに秘められたものを考えてみましたが、果たしてこれからどんな展開となるでしょうか
少なからず完結像が見えてきた気もするわけですが、まだまだじっくりと楽しんで読んでいきましょう










COMMENT▼

あえて逆の意見を書かせて頂きます
小野寺派ですがこの展開を恐れているので否定して欲しいので

その恐れている展開とは小野寺さんへの想いを学校で避けられ続けていた楽にヤクザの息子とか関係無しに接してくれる小野寺さんに対して羽姉のように友達のいない楽さんにとって唯一のつながりを求めているだけの感情でニセモノの恋扱いにされてしまうことを恐れています
誰か否定してください



No Subject

もしこの考察が当たっているとしたら、タイトルの意味が凄く深くて古味先生パネェですねw
でも本当に在り得そうな考察だけにちょっと当たってて欲しい気分ですwww

でもこうなると、小咲にも何かしらのニセコイがある(起こる)可能性が強いです。
最近の楽を見ていると「本当に俺が好きなのは千棘」に行きそうで怖いんですよね。
それをもし小咲が先に知ってしまったら「自分のマジコイをニセモノにしてしまう」恐れも。
最終的にはきちんと言うと思いますが、そのワンステップを踏みそうな気がしてきました。

mineさんへ

それは恐らくないと思います。なぜなら楽には「集」がいたからです。
男女の別はあれども、一人でも居ればそこへは至らないはず。そして二つ目の理由として、
楽もそれを感じていたなら「小咲より先に羽と共依存の関係になっているはず」です。

と、否定してみましたが幾らかお気が晴れましたでしょうか?

絵を見てください

mineさんへ

問題にされている絵をよく見てください。

この絵が千棘の魅力いっぱいに描かれていたら、私もここで千棘の方に舵を切ったと判断しますが、この絵は普通の千棘です。

要は参考画像ってことですね。ここで千棘に楽さんが惹かれていくという描写に説得力を持たせようという作画になっていない。

それだけで、mineさんの懸念は払拭できると思いますよ。

ラグエルさん、mickさんお返事ありがとうございます
なるほどそう考えれば納得がいきますね

不安になった要素がまた出てきたので見解をお聞かせ頂いてもよろしいでしょうか?
楽は小野寺さんのことを約束の女の子の面影を追って好きだと思っていた説です
私にはそうは思いたくないんですがニセコイの作中で随分と約束の女の子の面影を小野寺さんに重ねているので

mineさんへ

面影が良く重なるのは実際にそうか良く似ているからか、と思って良いと思います。
それに楽はきちんと小咲を見ています。大まかに言うと「優しいところが好き」だと。
そして最も大きい理由は「面影を重ねるには覚えている部分が余りにも少ない」点です。
シルエットぐらいしか思い出せない人物に、何をどう重ねて好きになるのかw
もしそうであるなら自覚が伴います。きっかけは似ていたからとかそんな感じに。
そうかも知れないという事実と、そうであったらという思いが重ね易くしているとは思いますが。

仮に重ねていたとします。しかしもう既にそれは意味を成しません。
なぜなら楽は既に「思い出と今の気持ちを天秤に掛け結論を出している」からです。
それがどの回かはもういうまでもないですよね。
(↑単行本派でしたならネタバレですが、この記事を読むのなら本誌既読と判断しました)

だったらいいな

楽さんの「思い出の女の子」に対する距離感は、案外健全ですよ。

昔のことは昔のことって分かってますし、単純に気になるっつーか、という程度です。

千棘のテンコウ編では、約束の女の子候補の鍵持ちである千棘と会えなくなるだろう場面でも、居なくなる前に錠を開けてはっきりさせようとはしていませんし。

小野寺さんとの関係では「小野寺があの子だったら最高」とは思っていますが、それは小野寺さんがヨリミチデートで言っていた「そうだったらいいな」と言う程度です。

そうでなかったとしても「小野寺さんが好き」なのはクリスマスデートで確認しています。

最終的には10年前に好きだったのも小野寺さん(でも約束の女の子は羽姉さん)だということが描かれると思っていますけどね。

No Subject

小野寺さんの場合、楽が千棘もしくは他のヒロインに惹かれかけた時、今までの自分の恋が否定されそうになったときに、この恋を偽物にはしたくない、今まで楽と過ごしてきた時間を偽物だと思いたくない、という風に『ニセコイ』という言葉を使えるのではないかな、とふと思いました。
今回の羽しかり、最終的には全てのヒロインにマジコイを求め、動くシーンが欲しいところです…

Re: タイトルなし

皆様コメントありがとうございます。

…いや、コメントというかお悩み相談のようになってますけどもw

>mineさん
ラグエルさんとmickさんがすでにご説明くださっていますので多くは言いませんが、ご心配の事態はまあありえないですね。


今週わざわざ「ニセモノの恋」という表現を出してきたことは、ひょっとしたら古味先生からのシグナルのようなものなのかと思って書いてみた記事でしたが、そうなるとやはり「小野寺さんにはニセコイが今後発生するのかどうか」は気になるところですね。

それについてもちょっと考えてみましょうか。

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