社会の毒 ―少年漫画症候群(ジャンプシンドローム)―

読んだらもう1回作品を見返したくなる、そういうレビューを私は書きたい

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夫婦から始まる恋もあるし、絆もある 『ラララ』 金田一蓮十郎

ラララ

ラララ 金田一蓮十郎

これもコメント欄で勧められて買っちゃった作品です


「ラララ」なんて、シンプル過ぎて逆に意味がよくわからないレベルのタイトルのこの作品

読んでみたら、何となく意味がわかりました


あらすじを先に説明すると、

主人公リストラされる→彼女にフラれる→バーでやけ酒→巨乳美人現れる→就職を誘われる→書類にサインする

→婚姻届でした


というぶっ飛び系ラブコメです


その上その巨乳美人さんは、ロングヘアが綺麗な女医さんで、家では裸族という

それなんてエロゲ?


出会った当初から何故かヒロインの好感度最高潮という作品も多い中、この『ラララ』は
出会っていきなり婚姻届というトップギアを見せてくれました


しかし、だからといってこのマンガがそうしたありふれたジャンルの作品と似ているのかといえばそんなことはありません
むしろ全く逆


巨乳美人さんが婚姻届を持ちかけてきたのは、周囲からの「結婚しろ」オーラが鬱陶しいから
適当に見つけた相手と籍だけ入れてしまえば、そんな夫婦が長続きするはずはないので
さくっと離婚してバツイチになりたいという作戦だったのでした

結婚しろオーラはうざい
でも結婚願望はそんなにないし、面倒くさい
バツイチなら1回は頑張った感があるから何も言われなくなる
じゃあバツイチになろう

…という思考回路だったそうな


「何じゃそら」感がありありな思考ですが、しかし何となくわかる気もしてくるから不思議です
ていうかバツイチに「1回は頑張った感がある」とかそんな解釈斬新すぎる


で、主人公の方はといえば
泥酔状態でサインした婚姻届に執着はもちろんありませんでしたが
目の前にいる女医で裸族で巨乳な美人には興味が大いにありました

その上、そのままあっさり離婚してしまうことは相手の思惑通りで何か嫌だという意地により、
新婚生活1日目に突きつけられたヒロインからの離婚要求を拒否するという事態に


そんな夫婦の馴れ初めが、3話までに描かれました
1話目読んだ時には「ハア?」と思った感覚が、ここまで読んでやっと腑に落ちたというか

3話目までがプロローグだったんですね


では、そんな彼らを中心にして作者金田一先生は何を描こうとしているか

それは、普通に生きていこうとする中で最も難しいこと


人との絆とはどうやって成立していくのか
人付き合いとはどういうことなのか
その究極系とも言える夫婦生活とはどのようにして過ごしていくものなのか

出会ったばかりで人間関係の到達点の1つと言える「夫婦」となってしまった2人を軸に
その関係と間柄をどのようにして続けていこうとするのか、その葛藤と喜びが描かれているんですね


その作劇を可能にしているのが、この「夫婦」のもう1つの側面
外で働いてくるのは妻であるヒロインの方であり、家計を預かるのは夫である主人公の方であること

すなわち、専業主夫ですね


リストラとフラれるとのコンボによってすっかりネガティブになっていた主人公は、男友達相手にくだを巻きながら
「女は男に寄生して永久就職でいいよなー」などと愚痴っていました

そんな主人公が、女医さんなヒロインに専業主夫として「雇われ」て
通帳もハンコも渡されて「掃除洗濯メシ風呂よろしく」となったわけです

おそらく、男の読者の中には主人公の愚痴と似たようなことを考えていた人も少なからずいると思います
それを見越して金田一先生が用意したその設定

ただ、だからって金田一先生は「専業主夫も大変なんだよ」とかそんなことを描こうとしているのではありません

どんなに愛を誓ったとしても元は他人である夫婦が上手く暮らしていくにはどのようにすればいいのか
「他人」から一足飛びに「夫婦」になった2人を中心に描くことで、人と接することのそもそもというところまで
踏み込んで描こうとしているのです

…しかし、一方でそれは単なる偶然ではないかという解釈も成り立ちます
この2人の物語を描こうとすれば必然的にそうした要素や側面を孕むことになるだけであり、作者としては
特段そうした意図があるわけではないのではないか

なぜなら、「結婚」した経緯により、2人の念頭には常に「離婚」が現実的な選択肢として存在しています

離婚してほしいヒロインと、何かそれが嫌な主人公

これだけ聞くと何とも殺伐としているような関係のようですが、そうなっていないのは
2人が基本的には真面目である故でしょう

「一応夫婦である以上は、互いに夫として/妻として最善を尽くそう」という意識がしっかり2人にあるんですよ

互いが認識している互いの役割をきちんと全うしようとし、不満があれば明確に伝えることによって善処するように頼む

「離婚」があり得る選択肢として常にすぐそこにあることにより、相手に甘えすぎない理性的な間柄となっているんですね

見ていて実に清々しい関係です
昼ドラのようなドロドロじみた感情的衝突とか、いわゆる仮面夫婦としてのギスギス感やしらけ感などは全くありません

あるのは理性的で理想的な夫婦像

頑固と妥協


妥協と理解




相手の存在を当たり前と思わずに、感謝の気持ちさえ抱けるような関係


そう
するかしないかは別として、最初は離婚のことばかりが頭にあった2人は
夫婦として共同生活を続けていくうちに互いに惹かれていくことに気が付きます

そしていつのまにか、お互いを好きだと思い合う普通の夫婦へと


そんな2人のもとに起こる色々な出来事

専業主夫な主人公がママ友とのお茶会に参加してみたり
主人公の元カノが連絡とりたがってるとか言われたり


2人がどんな生活をおくることになるのか、ずっと追いかけてみたいと思わせる力がこの作品にはあります

何が起こって、何を思って、何を話して、何を伝えるのか
何時でも切れる切れない絆を維持するために、2人はどうしようとするのか


登場する彼らの人生、生活、日常をずっと見ていたいと思える作品に出会えることは非常に稀有なことだと思いますが
この作品は間違いなくその1つです


気になる人はこちらから試し読みどうぞ

ラララ 第1話~第3話 - 金田一蓮十郎 - Yahoo!ブックストア

ラララ 1巻 - 電子書籍のソク読み(1話のみ)










[タグ] ラブコメ




COMMENT▼

11作目はコレでしたか

気に入りはしても買ってはいないと思ってましたw

ジャンルはぶっ飛び系ラブコメでありながらも背景にあるのは紛れも無いリアル。
これは金田一先生の前作「ニコイチ」にも通じるところです。流石に「ハレグゥ」には少ないですがw

記事の中で
「…しかし、一方でそれは単なる偶然ではないかという解釈も成り立ちます(中略)
特段そうした意図があるわけではないのではないか」
と書かれていますが概ねその通りだと思います。ただ一点、偶然の産物ではないとだけ。
「人付き合いとは斯くあるべき」を描こうとしているのではなく「作者の理念そのもの」なだけ。
そう言えるのは全ての金田一作品においてそう感じる描写が必ずあるからです。
それを示したのが記事内の
「何じゃそら」感がありありな思考ですが、しかし何となくわかる気もしてくるから不思議
の一文。背景にある「リアルな作者の理念」が漫画を通して伝わってきているのです。
それこそ意図してのものではないでしょう。故に「アリっちゃアリだよなぁ」と感じてしまう。

金田一先生が描く漫画に「必然」として生まれ出る印象

そこが金田一先生の漫画の最大の魅力と私は思っています。わざとらしさがないんですね。
押し付けがましくないというか、分かる人だけ分かってくれれば的な潔さというか、
それが根底にあるからこそ先生の作品には「柔らかな一体感」を感じるのだと思います。

個人的に4話の「おかしな女と結婚したなぁ」まで読ませられれば気に入るとは思ってました。
美人でスタイル良いけど破滅的におかしな女の石村亜衣。
大人の魅力も愛玩動物的な可愛さも併せ持つ、ある種モンスターですよこのヒロインはwww

そうそう

これも理念としてのものでしょうが2巻の命の値段の下りが凄い好きです。
あの値段以上に最適な解は在り得ない、そう思いましたね。

Re: 11作目はコレでしたか

コメントと紹介ありがとうございました。ラグエルさん

割と前に買っていたんですが、記事にするのがすっかり遅くなってしまいました。どんな風にレビューを書いたものか、なかなか出てこなかったためです。

雰囲気は非常に淡々としていながら、でも背景には結構深いことが追求されようとしているオーラ。しかし本当にそれは作者が描こうとしていることなのかどうか。
その辺りが考え出したらわけわからなくなってきて、どんな風に記事にするのか、書こうとする度に悩んでいました。

今回何とか書き上がりましたが、俺が感じていたのは他の作品でも感じられることだったんですね。作者の理念が自然に表れているのだとすれば、納得行く雰囲気です。押し付けがましくない、というのはぴったりな表現。

石村さんも何気に可愛い面を持ってて、この2人がいつ互いの呼び方が変わるかなあと思いながら読んでおります。


命の値段の話は、確かに強烈でしたね。数字出すのをあえて引っ張ってる感じはあったので一体いくらと言うのかと思ったら、まさかの額。わかる気がしました。

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