社会の毒 ―少年漫画症候群(ジャンプシンドローム)―

読んだらもう1回作品を見返したくなる、そういうレビューを私は書きたい

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課題は「ジャンプらしさ」と「自分らしさ」の間にあるか… 『ギゾク屋ケルベロス』 松浦健人

第99回トレジャー新人漫画賞佳作作品です

ギゾク屋ケルベロス 松浦健人

ここから読めます


ていうかいつのまにWebで読める佳作作品増えてたんだ…

最近のトレジャー受賞作は軒並み1本だけで、それがそのままグランドトレジャー賞っつってNEXT掲載になってばっかりだから
ジャンプのHPで読むなんてえっらい久々なんですけど

おかげで気づくのが遅れたぜ…


で、読んでみたわけですけどもね

何か、「とってもジャンプっぽいなあ」と思いましたね

架空のスラム街で、孤児院で暮らす少年と、彼を兄と慕う子どもたち
彼らのために少年は「ギゾク屋ケルベロス」を名乗って、盗賊狩りを生業としている…という
まあ設定だけ見ればだいたい見たことあるようなものですよ

同じ孤児院で暮らす同い年?くらいの少女が彼を心配する役として配置されているのも定石通り

違っているところがあるとすれば、電磁石の機能を持った義手とそれを使ったバトルということになるでしょか
まるで腕が3本あるように見せかけつつ、手数やら何やらで戦う様は粗い画力であってもそれなりに「おお…」とか思えました

ただしその部分が話のメインになっていないことが、作品の評価につながったといえるでしょう

その義手を使ったバトルは、導入となる冒頭とヤマ場となる終盤のバトルシーンに登場してきますが
どちらもあんまり考えこんだりすることなく展開していくんですね

義手の仕組みがどうとか、同じくサイボーグ的機能を駆使して盛大に暴れようとする敵の弱点を探すとか
そういう知略戦ではなく、さくっと頭を切り替えて「じゃあここだ」って感じで戦っている

そのおかげで、バトルシーンと孤児院の兄弟たちと少年の家族的関係を描くシーンとが
いい具合に分けて描かれている印象を生んでいます

メリハリが付いているといいますか


兄弟たちの声を聞いて何か覚醒、みたいな感じにはなっていないんですね

劣勢になって、兄弟たちからの声を聞いて、もう1度奮い立つ
そうした流れ自体は通常の作品と同じなんですが、過剰になりすぎていないことで
むしろ爽やかさすら感じるくらいに読みやすかったですね


画力も投稿作でこれくらいなら悪くないんじゃないでしょうか
講評には「ちょっと古い」みたいな内容もありましたが、これから特訓していくことで
いくらでもシュッとなっていけるように思います

構図とか、義手のバトル描写は非常に高いレベルにあると思えますし、それでいて起承転結を描ききる構成力もある

ジャンプらしいマンガを描いていける人として、期待を持てるんじゃないかと思います

あとは、そこからいかにして「自分らしさ」を出していけるかということですかね

この投稿作が「よくあるパターンを上手に描き切った」ものであったことで
この作者が何を描きたいと思っているのかというのは今ひとつわかりませんでした

これからの担当編集との打ち合わせの中で、それを見出していくことも重要な課題となるでしょう

松浦健人さん
期待しています



 




確かな基礎が感じさせる非凡な才能… 『Cover DOGs』 平良太郎


Cover DOGs 平良太郎

ここからどうぞ


第90回ジャンプトレジャー新人漫画賞佳作作品です

平、が苗字でいいのかな
それとも「平良」で「たいら」と読んで、「太郎」が名前なのかな
「たいらりょうたろう」なのか、「たいらたろう」なのか

ペンネームだとしたら、ちょっと捻った感じでいいですね


ていうかひさびさ!
トレジャー佳作作品の感想ってすっげえ久々ですよ

ここ何回かの受賞作は軒並み1作ばかりで、そのままグランドトレジャー賞として増刊掲載になっちゃってましたから
web掲載での佳作作品はもう何ヶ月ぶりかって感じですよ

…過去の記事を振り返ってみたら10月でした
思ってたより長かった…



で、この作品ですけど


うん、とってもいいと思いますよ


ドラマが描ける
信念が描ける
迫力ある大ゴマと見開きが描ける


基礎的な能力がほとんど平均以上のレベルにあって、非常に読みやすいです

画力はまだまだ荒削りなところがあるようですが、この作品にはむしろ意外と合っている気もします

主人公の舞子ちゃんが結構可愛く描けてたことはポイント高かったですね


話の流し方自体はテンプレ的ですが、それはむしろ王道的な展開を踏まえることができると言うべきでしょう
その上、主人公の信念に関わる回想を小出しに挟む構成も、決して読みづらいことはなくて

挿入されるべき場面、挿入して大丈夫な場面、それぞれの箇所で描く程度と
どこで現在と繋げるかというポイントがしっかりしていたことで、非常にスムーズに読んでいくことができたのです


設定説明のあっさりさも、本来描きたいのはそこじゃないということの表れとして、まあよかったんじゃないでしょうか

まあ気になった点を挙げるとしたら、主人公の戦闘力がちょっと弱いように感じてしまったことかな?
別段そんなに気にするところではないと思いますが、信念が立派というか、シンプルだっただけに
そのために殺される寸前まで行ってしまったのはちょっと残念といえば残念でした

まあそんなあげつらう程の欠点ではないですけど

大きな欠点が見当たらないだけに、ツッコミの仕方もちょっと困るのが正直なところなんですが


投稿作でこれだけ基礎的実力の高さを感じさせてくれるとは、編集部も期待したくなるでしょう
平良太郎さん、期待しています





 




キャラではなくストーリーで魅せる… 『15minutes』 西岡大殻

第85回トレジャー新人漫画賞佳作

15minutes 西岡大殻


ここからどうぞ


web掲載4作のうちの4作目です

他の3作にはキャラが弱いとか強いとか言ってきましたが、こちらはキャラではなくストーリーで魅せようとしたものですね


15分後の未来を夢に見る力を持つ幼馴染の少女のために懸命になる少年の姿が描かれた本作

作中で明言されてはいないものの、どうやら悪いことが起こる時ばかり未来が見えてくるようで
その未来を何とかして変えてやろうと主人公が奮闘します

この手の作品は、話としてわかりやすく結末をつけるためには
最後には見事に運命に打ち勝った、という形に持っていかなければならないものであり
すなわち読者には最終的な結果が想定できる中で、そこまでのシーンをいかにして「劇的」に描くかが課題となります

その点で行くと、この作品は非常に頑張っていた方ではないかと思いますよね


その始まりとなるのが、駅で少女が見てしまった「自分が死ぬ姿」でした

起承転結でいえば、転の部分に当たるここから話が一気に動くわけですが
泣き出した後多くを語らずに電車に乗って行ってしまった幼馴染の様子と、
いつも夢の内容をメモしているノートに走り書きされた文字を見て
少しの葛藤の末走りだす少年の決意が展開にスピード感を与えていました

そのスピード感が緊張感も一緒に連れているのが上手かったですね

さらに巧かったのが、「少女はどうやって死ぬことになっていたのか」ということです

夢に見てしまったのならその状況を回避するように努めればいいのですが
それが出来なかった理由がしっかり描かれていたのが今回一番いいと思った部分です

自分が行かなければ、仲良くなりかけていたクラスメイトがトラックに轢かれていたという状況
助けに行って代わりに自分が轢かれる姿を予知してしまった少女の胸の中は
15分の間如何程のものだったでしょうか

助けようとしたクラスメイトと仲良くなりかけるきっかけになったワンシーンが挿入されていたのも
身代わりになってでも助けに行くことを諦めきれなかった少女の気持ちを見事に表現できていました


そんな健気さを感じさせるからこそ、少女が轢かれる未来をぶち壊そうと懸命になる少年が眩しい


「そこまでのシーン」は確かに見事に劇的に描かれていたと言えるでしょう

その意味では、この作品で一番見せ場となる部分はしっかり描かれていたということはできるのですが
しかし、「もっと描けた」と思うのが正直なところです


場面の構成が少しわかりにくいかな?と思ったんですよね


少女を助けるために懸命に走る少年の姿とともにわずかに巻き戻される時間軸のところがね
おそらくは、あえて前後関係を逆に描くという演出の意味が込められているものだとは解釈できるんですが
ちょっとわかりにくいなーと


この時間軸が戻った場面では、少女が助けようとしていたクラスメイトから
少年に電話が掛かってくるシーンが描かれます

この携帯は、物語冒頭で「壊れる」という少女の予知を受けて少年が守ろうとして失敗したものですが
失敗したと思っていたものが実は壊れておらず、今少年が目指している「予知のぶち壊し」が
すでに実現できていたことを示すものです

さらに、その電話によって少年は少女の居場所を知ることができており
「失敗するかもしれないと思っててもあの時どうにかしようとしたおかげで、望みが繋がった」ことの
直接的示唆になっています

作中の「あの時の失敗も後悔も今に繋がっている」とはおそらくこのことを指すもので
同時に、その電話そのものは「予知の否定」という今一番望んでいることを実現した象徴でした

ならば、それに気づいた少年がもっと希望を抱いたり奮起したりする感じがあっても良かったかなと
作中の描写だけでは、少女の居場所を知った少年が一目散に走りだす部分だけが強調されていて
非常にもったいないように思うのです


なので、もう少し別の形でこのシーンは挟みこむことが出来なかったかなと
「その1分前」みたいな形での構成ではわかりにくいかなーと言う気がしてなりません


ただ、一番の山場までをちゃんと繋げきった実力は将来性のあるものです

画力とともに、構成や、キャラの深みも磨いた次の作品を楽しみにしたいと思います

西岡大殻さん
頑張ってください


 




ドラマ性はあるがキャラ作りが弱いか… 『CYBOZU』 植村達也

第85回トレジャー新人漫画賞佳作

CYBOZU 植村達也


ここからどうぞ


web掲載4作のうちの3作目ですね

またテンプレちっくな話を持ってきましたな


旅する主人公たちと偶然出会った少女がいて、何か苦しめられてる事情の解決に向かったら
襲っているのは魂が魔になったようなものだったという
それはもうベタベタな導入から始まってひと通りの流れも同様にベタベタなものですが

それでも最後まで読めたのは、ドラマだけはしっかりしていたからでしょうか

死者の魂が破壊を求める魔となってしまうことは、その前提ゆえに悲劇性を伴うものですが
その悲劇をしっかり描けていたんですね

少女の父親に起きた悲劇
主人公の母親に起きた悲劇

起こった時間軸が異なってはいても、そこにある感情は同じもので

だからこそ、それを動機とする主人公たちの行動には確かな芯が宿っている…


のですが、その描写の仕方としてはちょっと弱いと言わざるをえないですね

講評でも言われていますが、キャラ作りが弱いのです

まずは主人公の強さを感じにくいこと
俺1人で充分だといって呪人に挑んだのに、少女に向かって「バカこっち来んな」とか言ってる間に
腹に一撃食らって回想が始まっちゃうとか

回想が始まっちゃうくらいの一撃をいきなり主人公が食らっちゃうというのは、ちょっとあんまりじゃないかと


その上、少女が割り込んできたら意外そうなリアクションを見せてしまうのもよろしくない
魂が魔になった肉親を見て、少女がどんな行動に出るかということの想定ができていないことは
退魔を目的に旅をしているという彼らの覚悟を疑わせてしまうんですね

今までどのくらい旅をしてきたのか知りませんが、そういう場面は前にもあっただろうと
旅を始めたばっかというなら、むしろ旅を始めることになる過程を描いたほうが
物語としては良かったんじゃないかと

そんな風に思えてしまうのです


それと、出会った少女の事情を聞いている時も不自然なところが

盗賊に支配された村からここまでやってきた、と聞いて
次に出てくるリアクションが、「他の村人見捨てて1人で逃げてきたわけだ」という言い方になるのは
ちょっと違和感がありました

責めるような言い方をする場面には思えず、かと言って
読み終わってみれば、あえてそんな言い方をした意図も特になく
主人公がそんな穿った解釈をするような性格のキャラというわけでもなく

何だか浮いていたシーンです


それでいて、最後まで話を聞き終えたら
「蜘蛛退治だ」と言って、少女から助けを乞われる前に自分から首を突っ込もうとする

少女の父親の悲劇を聞いたことで、その魂が魔になってしまう可能性を思ったにしては、
村に到着して状況を実際に目にした時の反応はちょっと意外そうでしたし

彼らの考え方、感じ方に疑問を抱いてしまうことが
キャラへの感情移入を邪魔し、ひいては作品への没入を阻害してしまっています

悲劇の持つドラマ性ゆえに読ませることができていますが、キャラという点で言えば
結構よろしくないところがあるんじゃないかと

とはいえ、ドラマ性を持った話を作り上げる資質は持ってらっしゃるようですので
生きていることがしっかり感じられるキャラを作った上で、ドラマの中に展開させることができれば
重厚なストーリーが出来上がるんじゃないかとの予感があります


植村達也さん
頑張ってください


 




必要なのはキャラを深化させる構成力と演出力か 『機械兵器ノヴァ』 皇千尋

第85回トレジャー新人漫画賞佳作

機械兵器ノヴァ 皇千尋


ここからどうぞ


Web掲載となった4作品の2つめですが…


うん…


これは…ね……




もうぶっちゃけて言いましょう



これネジヤマさんだよね



天才的発明家が遺した人外的なものとともに暮らす少女が、それを狙う奴にさらわれて
人外くんがどストレートに助けに行くという

構図も展開も見事なまでにそのまんまですね


パクったとは別に思わないですが、あるいは運が悪かったのか…

金未来杯エントリー作品として『ネジヤマさん。』が掲載されたのは、第35号でした
7月28日の発売でしたね

で、今回のトレジャー賞は7月分の結果発表
締め切りは7月末日


『ネジヤマさん。』の初出はNEXT2014年冬号でしたが、似たような話をほとんど同時期に2人のプロ志望が
描いてしまった、ということでしょうかね

創作物の世界ではたまに起こることだと聞きます


そういう場合、後から世に出たほうがどうしても無駄に比べられてしまうということになるわけですが…



じゃあ比べたりしないで、この作品はこの作品として見たらどうかと言えば


キャラの深め方がもったいないです


世界観は近未来で、機械兵器システムが流行というより定着している世の中で

父親の開発した機会兵器ノヴァと暮らす少女

世界中の機械兵器の中でも最高レベルの性能を持つノヴァとともに少女が何をしているかといえば
ノヴァの力によって物騒事を解決する何でも屋みたいな「小遣い稼ぎ」でした

いや、これ自体はいいんです

いいんですけど、深めるべきところがここであるはずなんです
なのに実際の話はここには一切触れられずに、ただ少女とノヴァの絆をただ見せるような展開に終始しちゃって

これがもったいない

欲しかったのは、少女が小遣い稼ぎをやってる理由です
内容が内容だけに報酬金額は結構な額になってるわけですが、そうして稼いだ「小遣い」で
彼女は何をしたいのか

単純にお洒落したいとか高いもの食いたいとかそういうのでも構いません
あるいは重病の親友が…とか、ガチな理由でもいいです
ノヴァと一緒に何かドタバタしているのがただ楽しい、とかそんなのもいいでしょう

とにかく、小遣い稼いで少女が何をしたいのかを描く必要があったと思うのです

その上で、ノヴァはそのことに何を思いながら小遣い稼ぎに協力しているのかを示さないことには
描かれる「絆」に実感が伴わないんですよね

普段一緒に暮らしている、変な奴来たら少女の身を案じてとりあえず警戒する、少女がさらわれたらすっ飛んで行く
2人の絆を描くには、これだけだとちょっと浅い

何より、少女のほうがノヴァをどう思っているのかがぼやけるんです

停止ボタンを処分するほど信頼しているというノヴァを、小遣い稼ぎのために利用していることを
少女はどう捉えているのか

「小遣い稼ぎ」という言い方は、場合によってはマイナスな印象も持つ言葉です
それを、1人が一方的にもう1人を「使う」やり方でやっているという事実

それで2人の間には親愛の情もあるんですよと言うには、ますますそぐわない感じがしてきます

ですから、あえてその表現を使うのであれば、少女のほうがノヴァをどう思っているのかを
もっと強くはっきりと描く必要があったはずなのです



暴走機械兵器の破壊を頼みに来た依頼人のおっさんが実はその暴走機械だった、とか
どんでん返しというには小規模ですが、意外性のあった部分もありましたから
話作りの資質はあると思うんですよね

淡々と展開していく雰囲気は作品に合っていましたし


ですので、深めるところを深められる構成力と演出力が必要かなと感じました


皇千尋さん
頑張ってください


 




キャラ描写と演出から感じられる確かな話作りの力… 『BOX SWIM』 池松民歩

第85回トレジャー新人漫画賞佳作

BOX SWIM 池松民歩


ここからどうぞ


web掲載となった4作品の中で一番気に入ったのがこれです


とにかく構成の完成度が高い

そのために、展開に無茶な印象がほとんどなく
すべてが自然な形で進展していったような感覚を覚えて
それがすっきりした読後感になっているのです

投稿作でこの鮮やかさは見事ですね


中でも一番いいと思ったのは、やはり魚のハコが喋りだした瞬間でしょう

それまでは、主人公の少年がハコフグにそっくりというところ以外
現実に則した世界観でやってきていたのに、急に魚のハコフグが喋り出して
しかもそれが主人公だけには理解できるという特別展開

普通ならトンデモ超展開として、「はあ?」となるような場面なのですが
今作に限っては全くそんなことはなく

むしろ大きな驚きとともに、妙な緊張感を持って作品に引き込まれてしまう効果を果たした重要なシーンとなっていました


そんな演出を可能としたのは、それまでの流れがしっかり現実的だったからでしょうか
ハコフグに似ているということですっかり自分に自信を持てず、ウジウジしている主人公の少年と
そんなネガティブぶりを多少ウザいと思いつつ、でも普通に仲良くしてくれている親友

そして、容姿のことなど特に気にもせずに普通に話しかけてくれて部にも誘ってくれるヒロインの少女

とことん自己卑下する主人公と、特段気にしていない周囲の様子のギャップが
妙なリアル感を産んでおり、だからこそ、ハコフグが喋り出す瞬間に意外性を感じられてしまうのです


喋り出すその瞬間も、誘われるままについてきてしまった入部テストを目前にして
怖くて逃げ出そうとする主人公のヘタレっぷりが散々描かれた後に
いきなり吹き出しが濃くなって「お前は何も分かっちゃいねえな」と説教が始まるものでした

入部テストの場所に向かう途中であり、主人公と知り合いなのは隣にいるヒロインのみという状況の中
一体誰がこんなセリフを言ってくるのかと身構えてページをめくってみたら

お店のガラスの向こうにある水槽の中にいたハコフグだったという
これはなかなかに衝撃的でしたよ

巧妙なのが、主人公とハコフグの激似を説明する冒頭で
学校にいく途中にあるお店の水槽のハコフグに向かって主人公が話しかけているシーンがあるんですよ

もちろん彼としては、自分に似ているというハコフグに対して
八つ当たりのような独り言を呟くことで少々の憂さ晴らしとしていたのでしょうが

それを伏線として、今度はハコフグの方から話しかけられる
というか説教される

展開の雰囲気を一気に変える演出として見事なものでした



設定が粗い部分もあるにはあると思うんですが、この作品の場合は些細なことと言えるでしょうか
それよりも、ハコフグ似の主人公が少しの決意を抱くまでを描いた作品として
とっても上質なものだと思います

こうしたキャラ描写や演出の力があるのなら、画力をしっかり鍛えて
魅せる画面作りができるようになればいいとこまでいけそうな予感がありますね


池松民歩さん
次の作品を楽しみにしております


 




浅さは伸びしろの裏返しか…? 『RE QUEST』渡部開

第83回トレジャー新人漫画賞佳作

RE QUEST  渡部開


佳作5作品のうち、web掲載となった4作の最後です

ここから読めます


なんで最後になったかといえば、一番書きにくかったからなんですよ

なんで書きにくかったかといえば、一番浅かったからなんですよ

何が浅かったって、話と世界観ですよ


シンプルな勇者と魔王という対立像を設定しての、「魔王が倒された後の世界」に
勇者がどう生きているかを描いていた作品は、いつだったか他にも見たことがある気がするんですが
おぼろげなその作品の記憶とほとんど印象が同じなんですよ

勇者のはずの主人公は定職につけずにほとんどニート状態で、
それでいてしっかり働こうとしている昔の仲間から説教されている…みたいな

うろ覚えなんでアレなんですけど、ほとんど同じ構図と設定の作品を読んだ記憶があります
そして、その作品の印象とほとんど同程度の読後感のような気がします

何がってつまり浅いんです


普通の物語なら勇者たちが魔王を倒すまでの過程を劇的に描いていくところを
あえて「最終バトルのその後」に焦点を当てるというのはいいんです

しかし、平和になったはずの世界で勇者は負け組状態、ってのは何だかなあって思っちゃうんですよ

別に世界を救った業績を誇らしげに語って権力やら栄誉やらをかさに来て
横暴な感じになってろ、というわけではありませんが
世界を救った勇者がその後半ニートでは、「勇者は何のために世界を救いたかったのか」が
全く何もないことになっちゃうんですよね

魔王を倒して世界を救うことは勇者にとってゴール地点であり、
その後に何かをやりたかったようなスタートラインではなかった

ヒーローとは悪役がいるからヒーローであるという哲学的な話ではなく、動機や目的の問題なんです

何のために世界を救いたかったのか、その動機
もし、平和な世の中とか泣いている人がいるからといった感情的で根源的な理由であるとすれば
魔王を倒すことが手段ではなく目的であることは理解できます

しかし、それなら魔王を倒すことで全部が全部一件落着という考えに至ってしまうことがどうも不自然なんですよね
魔王いなくても悪い奴は普通にいるだろ、と
それこそ作中に出てきた一味のようにですね

その程度のことに気づけないか…?という不自然さが出てしまうんです

しかもその程度のことに作中の結末として気がついているから爽やかなはずのオチが逆に愚かしいというか

その上、敵一味との戦闘が始まったのが楽しくてワクワクしちゃってる主人公の様子が
さらにその感覚を増幅させるんです

そこにあるのは、感情的で根源的な理由で魔王を倒すことに命を懸けられるような
ストイックで理想的なヒーロー像ではなく、救った人から讃えられたり感謝されたりといった
見返りがあるからこそ身体を張っていけるという勇者像としてはどこか引っかかるような姿

魔王を倒すために冒険していた頃を「楽しくて充実していた」と懐かしむだけならまだ大丈夫でした
しかし戦闘が始まったら顔がキラキラし始めたり、敵の攻撃を食らって「これだよこの感覚だよ」なんて
盛り上がってるのは間違いなく理想的なヒーロー像ではなかったのです
悪く言えばヒーローではなく単なる戦闘好き

捻くれ系というか、そんなヒーロー像が悪いとは言いませんが
じゃあそれなら魔王を倒したらそれで全部悪は一掃された、なんて考えになるか?と


描きたかったのは、ラストページの「2周目だ!」のコマなんでしょうね

タイトルのクエストと言い、2周目って表現と言い、作者のゲーム脳を疑わせますね
ドラクエとかやってる時に思いついた話か?と



評価できるところといえば、基礎的な構成力でしょうか


話の始まりからオチに向かって、意外と普通に起承転結が構成されているんですよ

まだまだ荒削りとは言え、話の興し方から結び方の基本ができていることは
最低の合格ラインと言えるのではないかと

さらに、時折挟まれるギャグのようなシーンや、迫力を出そうとする見開きは
そこに至る流れや演出がこれも基本を押さえたものとなっていて、編集部としては「育ててみたくなる」感覚に
なったんじゃないでしょうか

マンガ家としての基礎的な器はそれなりにできているので、じゃあその器にどんな装飾を施そうかとか
どんな風に強化してみようかとか、伸びしろや成長を期待させるものがあったのではないかと思うのです

イコールそれは、誌面に掲載できる作品を作り上げるまでに結構な苦行があることを予想させるものですが
乗り越えた時にはなかなか面白い作家になっているのではないかと思われます

ひょっとしたら次に名前を目にするまでに時間があくかもしれませんが
渡部開さん、頑張ってください


 




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